遊園地は、土曜日ということもあって、とても賑やか。
よく晴れていて、全てのアトラクションが動いている。
子どもの頃に遊園地に来た時、途中から雨が降ってしまい、
野外のアトラクションを動かしてもらえなくなって、悲しかった経験があるから、
今日はそれだけで嬉しい。
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最初にジェットコースターに乗って、コーヒーカップに乗って、
ミラーハウスから出た頃に、ちょうどお昼の時間になった。
園内にある、いくつかのレストランの中から、セルフサービスのレストランを選ぶ。
一足先に席に着き、注文をしている修二くんの後ろ姿を見つめる。
確信があるわけじゃない。
無口なのも、感情をあまり顔に出さないのも、いつもと同じ。
仕草の端々に、何か引っかかるものがある。
微笑んでくれたかと思えば、すぐに暗い顔を見せる。
なんだか、またクラクラする。
体が熱い。
額に汗がにじんで、ハンカチで押さえる。
レストランの注文カウンターを見て、修二くんがこちらに背を向けて並んでいるのを確認してから、ミラーを取り出す。
ミラーで自分の顔を見て、ギョッとする。
幸い、メイク自体は、ハンカチで押さえる程度でなんとかなりそう。
注文に行ってくれていた修二くんが、トレーにふたり分の料理を乗せて、席に着いた。
喉元で止めた言葉は、結局声に出すことが出来なかった。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!
転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。