第20話

名木沢くんと遊園地②
5,421
2022/07/04 12:07
遊園地は、土曜日ということもあって、とても賑やか。
よく晴れていて、全てのアトラクションが動いている。
子どもの頃に遊園地に来た時、途中から雨が降ってしまい、
野外のアトラクションを動かしてもらえなくなって、悲しかった経験があるから、
今日はそれだけで嬉しい。
(なまえ)
あなた
わぁー! 遊園地、久しぶり!
(なまえ)
あなた
修二くん、どれから乗る?
名木沢 修二
名木沢 修二
ずいぶん元気だな
(なまえ)
あなた
あっ、高校生にもなって、はしゃぎすぎたね
名木沢 修二
名木沢 修二
いや、ちょうどいいよ。あなたの下の名前、遊園地似合ってるし
(なまえ)
あなた
それって、子どもっぽいって言ってる?
名木沢 修二
名木沢 修二
はは
(なまえ)
あなた
(めずらしい。修二くんが、声を出して笑った)
(なまえ)
あなた
(楽しみだったのは、私だけじゃなかったのかな)
(なまえ)
あなた
(それなら、嬉しいな)
(なまえ)
あなた
修二くん、絶叫系って得意?
名木沢 修二
名木沢 修二
ああ、割と
(なまえ)
あなた
よかった。ジェットコースター、今空いてるみたいだから、行こうよ
(なまえ)
あなた
っ!!
名木沢 修二
名木沢 修二
どうした?
(なまえ)
あなた
(なんだろう?)
(なまえ)
あなた
(今、頭がクラッとしたような)
(なまえ)
あなた
なんでもないよ。行こう
(なまえ)
あなた
(寝不足だからかな……)
最初にジェットコースターに乗って、コーヒーカップに乗って、
ミラーハウスから出た頃に、ちょうどお昼の時間になった。
園内にある、いくつかのレストランの中から、セルフサービスのレストランを選ぶ。
名木沢 修二
名木沢 修二
先に席行ってて。俺、注文してくるから
(なまえ)
あなた
ありがとう。おひや、持ってくるね
一足先に席に着き、注文をしている修二くんの後ろ姿を見つめる。
(なまえ)
あなた
……
(なまえ)
あなた
(修二くん、今日ちょっと変……?)
確信があるわけじゃない。
無口なのも、感情をあまり顔に出さないのも、いつもと同じ。
(なまえ)
あなた
(でも……)
仕草の端々はしばしに、何か引っかかるものがある。
微笑ほほえんでくれたかと思えば、すぐに暗い顔を見せる。
(なまえ)
あなた
(無理して、私に合わせてくれてるだけなのかな)
(なまえ)
あなた
(今日を楽しみにしていたのも、本当は私だけ?)
(なまえ)
あなた
(一緒にいても、つまらないかな……)
なんだか、またクラクラする。
体が熱い。
ひたいに汗がにじんで、ハンカチで押さえる。
レストランの注文カウンターを見て、修二くんがこちらに背を向けて並んでいるのを確認してから、ミラーを取り出す。
(なまえ)
あなた
(メイク大丈夫かな)
(なまえ)
あなた
(くずれてたら、トイレに行って直しに……)
(なまえ)
あなた
(……あれ?)
ミラーで自分の顔を見て、ギョッとする。
(なまえ)
あなた
(朝より、赤くなってる?)
幸い、メイク自体は、ハンカチで押さえる程度でなんとかなりそう。
(なまえ)
あなた
(日がってきて、暑いから?)
(なまえ)
あなた
(妙に喉もかわくし)
名木沢 修二
名木沢 修二
お待たせ
(なまえ)
あなた
ありがとう
注文に行ってくれていた修二くんが、トレーにふたり分の料理を乗せて、席に着いた。
(なまえ)
あなた
おいしそうだね!
名木沢 修二
名木沢 修二
……大丈夫か?
(なまえ)
あなた
? どうして?
名木沢 修二
名木沢 修二
いや、なんか疲れてるっぽく見えた
(なまえ)
あなた
まさか。そんなことないよ
(なまえ)
あなた
修二くんこそ……
(なまえ)
あなた
(修二くんこそ、ちゃんと楽しい?)
(なまえ)
あなた
……ううん、なんでもない
(なまえ)
あなた
お腹すいたね。食べよう
喉元のどもとで止めた言葉は、結局声に出すことが出来なかった。

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