傘は一哉くんが持ってくれて、ふたり並んで道を歩く。
お互いに濡れないように、肩を寄せあって、距離がすごく近い。
私の隣にいる顔を、時折見上げる。
(本当に、似てる)
(背の高さも、ほとんど同じ)
(顔は……、髪の毛の分け目が違うくらいなのかな)
(でも、今ならはっきりとふたりの違いが分かる)
(今、告白をしようとしたら、絶対に間違えない)
(間違わず、……あれ?)
ピタリと思考を止める。
(告白って、……どっちに?)
どうかした?
……ううん、何も
そう? さっきから、なんか難しそうな顔してるから
見られてた? 恥ずかしいな
あはは
こんな近くにいるんだから、見るなって方が無理だよ
だから、あなたの名字さんも、俺のこといっぱい見ていいからね
え? あはは、ありがとう
沈黙にならないように、気をつかってくれているのか、一哉くんはずっと話しかけてくれる。
今までにないくらいの近い距離に、どうしようか戸惑っていたけど、
今ではもう、昼休みに一緒にいる時と同じ空気。
(一哉くんとは、一緒にいるとすごく落ち着くな……)
そういえば、あなたの名字さんちって、どの辺?
あ、うちはね、これから……1、2……、あ、3個目の信号かな。そのすぐのところなの
じゃあ、うちの方が学校に近いんだ
……え?
一哉くんたちの家の方が、近いの?
そうだよ。うちは、次の信号の手前だから
あれ? 知らない? 修二と毎日一緒に帰ってるんだよね?
うん……
(だって修二くんは、いつもうちまで送ってくれる)
(初めて一緒に帰った日にも、自分の方が遠い家だからって言って……)
(え? それなら、修二くんはいつも……)
──バシャッ!
うわ!?
ひゃあ!!
思考が、強制的に終了する。
一瞬、何が起こったか分からなかった。
気づいた時には、一哉くんとふたりで、全身ずぶ濡れになっていた。
うわー、あの車ー……
一哉くんが、恨めしそうに走り去る車を睨む。
私たちは、すれ違いざまに車に思いっきり水をかけられたらしい。
ハンカチを出し、一哉くんに渡す。
大丈夫? 意味ないかもしれないけど、これ使って
俺は大丈夫。あなたの名字さん、女の子なんだから、自分で使って
!
渡したハンカチで、一哉くんは私の顔を、ポンポンと軽く叩くように拭く。
これで帰るの、大変でしょ
うちの方が近いから、服乾かしていきなよ
そ、そんな、大丈夫だよ!
そこまで遠くないし
雨も強くなってきたし、遠慮しないで
遠慮っていうか……
は……っくしゅん!
ほら、こんな状態で、女の子をひとり帰せないよ。風邪引くって
えっ、えっ、あの
押し切られるように、私は一哉くんに連れられて、名木沢家に行くことになってしまった。
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編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。