第24話

名木沢くんと廊下で
5,423
2022/07/30 04:00
野田 聡美
野田 聡美
あなたの下の名前! もー、ギリギリだよ。世界史の先生、遅刻にはめっちゃ厳しいんだからね!
(なまえ)
あなた
えへへ……
休み時間の終わりギリギリに教室に戻ると、待っていてくれたのか、
聡美ちゃんが焦りながら注意をしてくれた。
野田 聡美
野田 聡美
あれ? 何かあった?
(なまえ)
あなた
何かって?
野田 聡美
野田 聡美
いや、顔赤いから
(なまえ)
あなた
!! 走って戻ってきたからかな
野田 聡美
野田 聡美
そっか
自分の席に着き、机の上に授業の準備をする。
ふと一哉くんの席を見てみると、パチッと目が合って、すぐに目を伏せた。
(なまえ)
あなた
(わ、わざとらしかった!?)
(なまえ)
あなた
(……一哉くんが、私を好きだなんて)
(なまえ)
あなた
(それも、あの言い方だと、私が好きになる前から……みたいな)
(なまえ)
あなた
(嘘みたい)
(なまえ)
あなた
(それこそ、夢みたい)
授業が始まって、先生の声を聞き流しながら、自分の世界に入り込む。
怪我のせいで、人よりも入学が遅くなって、すでに友達のグループは出来上がっていて。
ひとりぼっちにも慣れて、諦めかけた頃、助けてくれたのが一哉くんだった。
(なまえ)
あなた
(それで、一目で好きになって……)
(なまえ)
あなた
(そんな人が、私を?)
また、一哉くんの姿を盗み見る。
私の方が、彼よりも後ろの席にいるから、授業中である今は、目が合うことがない。
(なまえ)
あなた
(告白を間違えなかったら、OKを貰えて、今でも私は一哉くんと付き合っていたのかな)
放課後になって、帰り支度をする。
つい、いつもの癖で待ってしまったけど、もう修二くんは迎えにこないことに気づいて、
黙って席を立った。
うつむきながら、廊下を歩く。
そのせいで、自分の歩く先を見ていなかった。
ドンッと誰かにぶつかって、顔を打った。
(なまえ)
あなた
ご、ごめんなさい!
顔も見ずに、頭を下げる。
名木沢 修二
名木沢 修二
……大丈夫か?
(なまえ)
あなた
声を聞いて、ますます顔を上げられなくなる。
(なまえ)
あなた
(修二くん……!)
名木沢 修二
名木沢 修二
学校、来られるようになったんだな。体調悪くしてたって、聞いたから
名木沢 修二
名木沢 修二
もう平気なのか?
(なまえ)
あなた
(なんで私のことなんか、心配して……)
(なまえ)
あなた
う、うん……
名木沢 修二
名木沢 修二
それなら、よかった
顔は見れない。
だけど、きっと修二くんは今、ホッとしたように、滅多めったに見せない笑顔を浮かべている。
昼休みの、一哉くんの言葉を思い出す。
『修二は、興味がないと、愛想笑いすらしない』
(なまえ)
あなた
(それなら、私は?)
名木沢 修二
名木沢 修二
……いや、余計な心配だったな
(なまえ)
あなた
え?
やっと顔を上げて、修二くんの視線の先を追いかけると、そこには一哉くんがいた。
名木沢 一哉
名木沢 一哉
よかった、追いついて
名木沢 修二
名木沢 修二
じゃあな
(なまえ)
あなた
あ……
去っていく修二くんの後ろ姿を見送って、逆に、一哉くんはこちらに近づいてくる。
名木沢 一哉
名木沢 一哉
ごめん、邪魔したかな?
(なまえ)
あなた
ううん、そういうのじゃないよ。前を見てなくて、ぶつかっちゃったの
(なまえ)
あなた
一哉くんは……何か用だった?
昼休みのこともあって、一哉くんの顔も上手く見られない。
名木沢 一哉
名木沢 一哉
用っていうか……、よかったら、一緒に帰らないかと思って

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