日も落ちてきて、園内にいた人たちも、少しずつ少なくなってきた。
体が熱いのに、悪寒がする。
修二くんは、あまり喋らなくなってきた。
ずっと気のせいかもしれないと思っていたけど、この体調不良には心当たりがある。
同じような状況でいた一哉くんが、昨日休んだことを考えれば、私が風邪を引くのも当たり前。
自分の体調を考えれば、その提案は受け入れた方がいい。
辺りを見回し、目に飛び込んだのは、遊園地を象徴する大車輪。
*
薄暗くなってきたこともあって、観覧車からの景色に、キラキラのネオンが見える。
私たちは、隣同士に座っている。
ずっと立って、歩いてばかりいたから、座るだけでもホッとする。
心当たりがあるのは、昨日の昼休みの、聡美ちゃんとの会話。
私は本当に、修二くんを一哉くんと間違えた。
ズルい私は、うつむいて口を閉ざす。
強引に自分の方へ顔を向かせるように、修二くんの手のひらが頬に触れる。
そして、顔が近づいて……
とっさに両手を出して、修二くんを押しのける。
修二くんは優しく私の頭を撫でて、口元で笑う。
*
その日は、家に帰ってすぐ、寝込んでしまった。
涙でぐちゃぐちゃになった顔を布団に埋めて、ふと思い出した。
あの遊園地では、観覧車にカップルで乗ると、必ず別れるというジンクスがあったことを。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。
登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。