第22話

名木沢くんは、彼氏じゃない
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2022/07/16 04:00
翌日の日曜日まで、ずっとベッドの上だった。
頭が熱い。
ずっと体が重い。
一晩休んだはずなのに、朝、目が覚めると昨日よりも具合が悪くなっていた。
忘れたいのに、ずっと消えない記憶が、昨日の出来事は現実だったのだと、突きつけてくる。
(なまえ)
あなた
(フラれちゃったなぁ……)
(なまえ)
あなた
(目が覚めたのに、あれは夢じゃなかったんだ)
ママ
あなたの下の名前、具合どう?
遠慮がちに自室の扉が開いて、ママがそっと入ってくる。
ママ
やだ、泣いてるの?
(なまえ)
あなた
ママ……
ママ
そんなに辛い? 休日診療やってる病院に行く?
(なまえ)
あなた
ううん……、だるくて、病院まで行くのが辛いから、いい
ママ
そう……。明日、少し良くなったら行こうか
(なまえ)
あなた
うん……
ママ
そうだ。こないだの雨の日、あんたが借りた服、アイロンがけまで終わったから、具合が良くなったら返しにいきなね
(なまえ)
あなた
ありがとう……、分かった
ママ
何か作ってくるから、またそれまで寝てなさい
ママがベッドのそばに置いてくれた、修二くんの服をチラッと見る。
(なまえ)
あなた
(会いたい)
(なまえ)
あなた
(でも、会いたくない)
(なまえ)
あなた
(今は、想うだけで辛い)
学校に再び行けるようになったのは、それから三日後だった。
野田 聡美
野田 聡美
あなたの下の名前~、久しぶり! ずいぶん休んだね? 大丈夫だったの?
(なまえ)
あなた
聡美ちゃん、おはよう
(なまえ)
あなた
体が重すぎて、ベッドから動けなかったよ。ずっと聡美ちゃんに会いたかった
野田 聡美
野田 聡美
やだ、もうー、あたしだって寂しかった
昇降口で聡美ちゃんに会って、一緒に教室に向かうことにする。
修二くんと別れたことは、まだ話していない。
野田 聡美
野田 聡美
休んでた時のノート、あとで見せるね
(なまえ)
あなた
ありがとう
教室に着いて、まず視界に入るのが、一哉くんの姿。
(なまえ)
あなた
(元気そう……)
(なまえ)
あなた
(一哉くんも治ったんだ。よかった)
私の視線に気づいたのか、窓際にいた一哉くんは、教室の扉のほうにいた私に、小さく手を振った。
昼休みになって、私は久しぶりにいつもの空き教室に向かった。
待っていても、修二くんは来ないだろうけど。
窓の外の景色を見ながら、弁当箱の包みをほどく。
数分もしないうちに、再び扉が開く。
名木沢 一哉
名木沢 一哉
久しぶり。あなたの名字さんも、風邪引いてたんでしょ? 大変だったね
(なまえ)
あなた
一哉くんも、元気になって安心した
名木沢 一哉
名木沢 一哉
俺は、全然だよ。月曜日から登校出来たしさ
名木沢 一哉
名木沢 一哉
それで、あなたの名字さんまで体調悪くしたって聞いて、びっくりしたよ
(なまえ)
あなた
あの時の雨、冷たかったもんね
名木沢 一哉
名木沢 一哉
ねー、ふたりで、まんまと風邪引いたよね
名木沢 一哉
名木沢 一哉
……
一哉くんは、私の隣の席について、少し気まずそうな顔をする。
名木沢 一哉
名木沢 一哉
えっと、あのさ……
名木沢 一哉
名木沢 一哉
こういうこと、聞いていいのかわかんないんだけど
名木沢 一哉
名木沢 一哉
修二と別れたって、本当?

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