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第25話

名木沢くんと恋に落ちたら
6,774
2022/08/06 04:00
一哉くんと、一緒に帰る……?
あの、雨の日みたいに。
私が気にしないように、ずっと話しかけてくれて、ニコニコ笑っていて、とても穏やかな時間。
彼と一緒にいれば、きっとずっと、そんな時を過ごせる。
頭の中で考えて、結論はすぐに出た。
(なまえ)
あなた
……ごめんなさい
名木沢 一哉
名木沢 一哉
あ、何か用がある? じゃあ明日は?
首を横に振る。
帰り道は、いつも修二くんが隣にいた。
そこにいるのは、君じゃなきゃ駄目だから。
(なまえ)
あなた
ごめんなさい、一哉くん
(なまえ)
あなた
一哉くんは優しくて、いつも助けてくれて、一緒にいると安心する。……でも
(なまえ)
あなた
私は……
それだけで、彼には全て伝わったらしい。
一哉くんは悲しそうに笑って、廊下の先を指さした。
名木沢 一哉
名木沢 一哉
今追いかければ、まだ間に合うよ
(なまえ)
あなた
ありがとう
頭を下げて、廊下を急ぐ。
階段を駆け下りて、昇降口へ向かう。
修二くんは、自分の靴箱を開けて、上履きを入れているところだった。
(なまえ)
あなた
修二くん!
名木沢 修二
名木沢 修二
!?
名木沢 修二
名木沢 修二
えっ……、あなたの下の名前?
修二くんが、驚いて、目を丸くしている。
私が突然告白した時と、同じ顔。
呼吸を整えて、修二くんへとゆっくり足を踏み出す。
(なまえ)
あなた
あのね、私……
声がかすれる。
(なまえ)
あなた
私、最初は、告白の相手を間違っていた
(なまえ)
あなた
修二くんを、一哉くんと……間違ったの。好きな人の顔の見分けもつかないくせに、告白したの
(なまえ)
あなた
ずっと言えなくて、ごめんなさい……
胸の音がうるさい。
修二くんは、黙って聞いてくれている。
(なまえ)
あなた
修二くんも、本当は、皆の前で断ったらかわいそうだから、私を彼女にしてくれたんだよね
(なまえ)
あなた
それを分かってて、修二くんの手を離せなくてごめんなさい
(なまえ)
あなた
帰り道、本当はうちの方が遠いのに、黙って毎日送ってくれるところとか、言葉に出さない優しさも、大好き
(なまえ)
あなた
私、ずっと、修二くんの優しさに甘えてたの
また顔を見るのが怖くなって、どんどんうつむいていく。
(なまえ)
あなた
告白の相手を、間違えた。それは本当。……でも
(なまえ)
あなた
でも、私は、修二くんが好きです
声が、手が、震える。
(なまえ)
あなた
もう一度、私を彼女にしてくれませんか?
名木沢 修二
名木沢 修二
……
視線は感じる。

だけど、顔は上げられない。
名木沢 修二
名木沢 修二
……間違ってない?
(なまえ)
あなた
え?
名木沢 修二
名木沢 修二
俺と、一哉を
(なまえ)
あなた
間違ってない!
名木沢 修二
名木沢 修二
本当に?
(なまえ)
あなた
うん、絶対
(なまえ)
あなた
私は、修二くんが──
言葉尻を奪われた。
修二くんが私の手を引いて、ぎゅうっと抱きしめたから。
(なまえ)
あなた
えっ、し、修二くん!?
名木沢 修二
名木沢 修二
俺も、あなたの下の名前が好きだ
初めて聞いた、修二くんの気持ち。
まっすぐに入り込んできて、涙がにじむ。
(なまえ)
あなた
……本当?
名木沢 修二
名木沢 修二
好きだよ
名木沢 修二
名木沢 修二
信じられないなら、何回言ってもいいけど
(なまえ)
あなた
そんなに聞いたら、また私ばっかり得しちゃう
名木沢 修二
名木沢 修二
お得な彼女になりたい?
(なまえ)
あなた
うん
名木沢 修二
名木沢 修二
それなら、あなたの下の名前も、何回でも言って
修二くんの背中に、腕を回す。
(なまえ)
あなた
好き
(なまえ)
あなた
大好き、修二くん
もう間違えない。
私の居場所は、君の隣だけだから。

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