一哉くんと、一緒に帰る……?
あの、雨の日みたいに。
私が気にしないように、ずっと話しかけてくれて、ニコニコ笑っていて、とても穏やかな時間。
彼と一緒にいれば、きっとずっと、そんな時を過ごせる。
頭の中で考えて、結論はすぐに出た。
首を横に振る。
帰り道は、いつも修二くんが隣にいた。
そこにいるのは、君じゃなきゃ駄目だから。
それだけで、彼には全て伝わったらしい。
一哉くんは悲しそうに笑って、廊下の先を指さした。
頭を下げて、廊下を急ぐ。
階段を駆け下りて、昇降口へ向かう。
修二くんは、自分の靴箱を開けて、上履きを入れているところだった。
修二くんが、驚いて、目を丸くしている。
私が突然告白した時と、同じ顔。
呼吸を整えて、修二くんへとゆっくり足を踏み出す。
声がかすれる。
胸の音がうるさい。
修二くんは、黙って聞いてくれている。
また顔を見るのが怖くなって、どんどんうつむいていく。
声が、手が、震える。
視線は感じる。
だけど、顔は上げられない。
言葉尻を奪われた。
修二くんが私の手を引いて、ぎゅうっと抱きしめたから。
初めて聞いた、修二くんの気持ち。
まっすぐに入り込んできて、涙がにじむ。
修二くんの背中に、腕を回す。
もう間違えない。
私の居場所は、君の隣だけだから。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!