昼休みに、聡美ちゃんにメイクを教えてもらって、スマホにメモをした。
帰りは、いつも通りに修二くんが教室まで迎えに来てくれた。
修二くんが、目元を優しく細めて笑う。
大きな手の平で頭を撫でられて、自然と口元がゆるんでしまう。
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日にちが変わって、今日は土曜日。
デートの約束の日。
学校に行く日には考えられないくらいに早い時間にアラームを設定して、大きなあくびと共に目を覚ました。
昨日買ったコスメを鏡の前に広げて、聡美ちゃんに教えてもらったメイク動画をスマホで開く。
慣れない手つきで、プルプル震えながら、なんとかメイクが完成した。
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待ち合わせは、駅の改札前。
少し早くやってきて、折りたたみミラーで確認。
そうは思っても、そんな時間はない。
修二くんを待たせることになってしまう。
親指で、頬をこすってみる。
落ちない。
行先は、遊園地。
動きやすいようにスニーカー。
スカートは短めだから、午前中の今は少し寒い。
ジーンと目の奥が熱くなって、涙が出そうになる。
今日が本当に楽しみで、浮かれていて、……気づかなかった。
修二くんが、どんな気持ちで今日を迎えたかということを。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。
登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。