第19話

名木沢くんと遊園地①
6,037
2022/06/25 04:00
昼休みに、聡美ちゃんにメイクを教えてもらって、スマホにメモをした。
帰りは、いつも通りに修二くんが教室まで迎えに来てくれた。
(なまえ)
あなた
(聡美ちゃんに教えてもらったコスメ、家に帰ったらまた改めて買いに行こう)
(なまえ)
あなた
(修二くんがいる時にお店に行って、買ったものバレたくないし)
名木沢 修二
名木沢 修二
あなたの下の名前
名木沢 修二
名木沢 修二
なんか、顔赤くないか?
(なまえ)
あなた
本当? 明日のデートのこと、考えてたからかな
(なまえ)
あなた
(朝の聡美ちゃんと、同じようなタイミングと理由なの、恥ずかしすぎる)
名木沢 修二
名木沢 修二
なんだそれ
修二くんが、目元を優しく細めて笑う。
(なまえ)
あなた
デートするの初めてだし、ずっと楽しみにしてるんだ
名木沢 修二
名木沢 修二
そっか
大きな手の平で頭を撫でられて、自然と口元がゆるんでしまう。
(なまえ)
あなた
(これ、好きだな)
日にちが変わって、今日は土曜日。
デートの約束の日。
(なまえ)
あなた
ふああ……
学校に行く日には考えられないくらいに早い時間にアラームを設定して、大きなあくびと共に目を覚ました。
昨日買ったコスメを鏡の前に広げて、聡美ちゃんに教えてもらったメイク動画をスマホで開く。
(なまえ)
あなた
(プチプラコスメだけ教えてもらったけど、合計すると結構高かったなぁ……)
慣れない手つきで、プルプル震えながら、なんとかメイクが完成した。
(なまえ)
あなた
(変じゃないといいな……)
待ち合わせは、駅の改札前。
少し早くやってきて、折りたたみミラーで確認。
(なまえ)
あなた
(こんなに、頬にチーク入れたっけ?)
(なまえ)
あなた
(なんか赤すぎる。やり直したい……)
そうは思っても、そんな時間はない。
修二くんを待たせることになってしまう。
親指で、頬をこすってみる。
落ちない。
(なまえ)
あなた
(メイクなんだから、簡単に落ちちゃ困るから、本来なら落ちにくいのはいいことなんだろうけど)
行先は、遊園地。
動きやすいようにスニーカー。

スカートは短めだから、午前中の今は少し寒い。
名木沢 修二
名木沢 修二
あなたの下の名前
名木沢 修二
名木沢 修二
悪い、待たせたか
(なまえ)
あなた
ううん、私も今来たばっかりだよ
(なまえ)
あなた
(このベタなやり取り、憧れてたなぁ
(なまえ)
あなた
(私服の修二くんも、かっこいい)
(なまえ)
あなた
(制服の時より、脚が長く見える)
名木沢 修二
名木沢 修二
あれ? 顔……
(なまえ)
あなた
!!
(なまえ)
あなた
(チークの失敗が!)
(なまえ)
あなた
あの、メイクしてみたんだけど
名木沢 修二
名木沢 修二
ああ、なんかいつもと違うと思ったら、メイクか
(なまえ)
あなた
うん、でも、ちょっと失敗しちゃったみたい
名木沢 修二
名木沢 修二
どこが?
名木沢 修二
名木沢 修二
可愛いけど
(なまえ)
あなた
えっ!? あ、ありがとう……!?
(なまえ)
あなた
(か、可愛いって言われた!?)
(なまえ)
あなた
(修二くんがそんなふうに言ってくれたの、初めて……)
ジーンと目の奥が熱くなって、涙が出そうになる。
名木沢 修二
名木沢 修二
行くか
(なまえ)
あなた
うん
今日が本当に楽しみで、浮かれていて、……気づかなかった。
修二くんが、どんな気持ちで今日を迎えたかということを。

プリ小説オーディオドラマ