先輩に連れられてきたのは前上級生に閉じ込められたグラウンドの倉庫前。勿論人影なんてなく、私と先輩の2人きり。
急になんの質問だ? と思いながらも、素直に答えた。すると、先輩は そーじゃなくて.... と苦笑いを浮かべた。
そーじゃないなら、どーなのさ....?
───考えたことなかった....
思わぬ意図の質問に、口をが半開きのまま固まってしまった。
恋愛的なイミで、好きな人....
そのワードで浮かんできのは、
一ノ瀬先輩だった。
赤くなったであろう顔を誤魔化すように下を向いて、途切れながらも否定した。
私の顔に伸びてきた先輩の手が顎をつかんで、クイッと上に持ち上げた。
意地悪しすぎたね.... なんて言いながら手を離してにこりと笑った先輩は、だけどすぐに真剣な顔になって言った。
ほんとなんで....
初めて告われたときもそうだった。
なんで、私が好きなんだろう、って。
すると、先輩は頭の後ろをかきながら呟いた。
───んん....?
覚えてないって....何を───?
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。