パチパチと拍手が送られて、ぎこちない愛想笑いを浮かべた。すると先輩と目が合い、ウインクに対して思い切り嫌な顔をした。
そして、背中にはチクチクと視線を感じた。
そっと肩から覗くと、それは予想通り大人数の女子だった。
入ったからには部活に集中しようと、支障を来さない程度で先輩に近付かないと決めた私だが、その願いはあっさりと破れた。
─────....
キャプテーーーン!?
満面の笑みで倉庫へ歩きだした先輩の後ろ姿を呆然と見つめながら、これからの女子の嫌がらせを想像して身震いをした。
全くへこんだ様子のない先輩を前に、私は2度目の大きなため息をついた。
なんだって先輩とこんなに関わらなくちゃいけないんだ....と、いうか....
言われた通りに倉庫の整理をしているのだが、首に息がかかるほどの距離でその様子を覗き込んでいる先輩。
心なしか両手で逃げ道を塞がれている気がする....
これはあれだろうか。
女子がやると可愛い “上目使い” なるものだろうか。
首を傾けて、後から顔を覗き込んでくる先輩。
耳が見える。 垂れ下がった耳が見える。
やっと解放された私は、整理を終えた倉庫を後にし、ドリンクを作りに外へ出た。のはいいが、当たり前だがギャラリーの女子に捕まり、そのままずるずると引きずられ....
ることはなく、太陽が助けてくれた。
流石幼馴染み。 助かった。
その後は中学の頃の経験を生かして、重労働から審判までこなしていった。
何を言われるかわからないので、楽しかったのは私だけの秘密だ。
外がすっかり暗くなったところで、初日の部活が終わった。
帰り支度を済ませて太陽を待っていたら、肩をとんとんと叩かれた。振り返ると、頬に指が当たる感触。
ケタケタと笑う一ノ瀬先輩に冷ややかな視線を向けた後、一応用事を聞いてみた。
────....
そんなことだろうと思いましたよ....
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!