私達の部は他より仲が良かった。
練習だって全部全力だったし、手なんて一切抜いてない。はずだった。
そう思っているのが私だけだったなんて、思ってもみなかった。
あの頃を思い出して、自分で苦笑する。
話終えたところで、はっと我に返る。つい、話しすぎてしまった。
そっと先輩の様子をうかがうと、眉間に皺を寄せ、苦しみに耐えているような表情をしていた。
ポツリと呟かれた言葉。聞こえずらくて え? と聞き返すと、今度はハッキリと聞こえた。
座っていたマットから勢いよく立ち上がった先輩は、そのまま目の前でしゃがんで肩を掴んできた。
その勢いに圧されつつ、私は、じんわりと暖かくなった胸にそっと手を当てた。
先輩はうざいですけどね と、付け足せば、むぅ と頬を膨らまして指を突きつけてきた。
私は、チラリとドアを見た。
錆びて赤茶色になった重そうな鉄の扉。
こんな扉、チェーンで鍵をかけられてしまえば開けられるはずもない。
秤にかけるまでもなかった。
ニヤリと笑った先輩は、ゆっくりとドアの前に歩いていき、腕をクロスさせ、息を吐きながら腕を戻した。
あ、あれ? この雰囲気....
幼馴染みの毛◯ 蘭ちゃんでは.....?
大きな掛け声と共に引かれた足は、見えないほどのスピードでドアに直撃。
そのまま ガァァンッ! と音をたてて、差し込んできた目を刺すような眩しい光。
────MA ZI DE ?
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。