ああもう、最悪だ。
数分前、一緒に帰ろうと誘われた私は勿論断った。
筈なのに、私の視界にチラチラうつる茶髪。
────じ ゃ あ 帰 れ ば ?
しゃがんで砂に石で何かを書いている様子の一ノ瀬先輩。
けどまぁ、確かに遅い....
急に声をあげた先輩は、ちょいちょいと私の制服の裾を引っ張ってきた。言われた通り見てみれば、傘の左右に書かれた『さくひ』と『あなた』という名前。
おい、なんだこれは。
私はそれを無言で踏み潰した。
校内にいる生徒が少ないため静かな空間に、先輩の声だけが響いた。
はぁ....
太陽に連絡しようとスマホを取り出し、LINEのアイコンをタップして───
私の手首を掴んだまま黙り込んだ先輩。
あ、れ....? 怒ってる....?
いきなり引っ張られたと思えば急に抱きついてきた先輩に、思わず声が詰まる。が、すぐに立て直して押し返す。
ほどよく筋肉のついた体を力を込めて押し返すが、全く敵わずさらに距離を縮められてしまった。
こンの馬鹿力....!
生暖かい風が耳を撫でた。
ゾクゾクとしたものが背中を伝い、思わず声が漏れる。
こ、これは....
───かなり、まずいっ....!
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。