第3話

善逸が黒髪に戻さない理由-2-
174
2019/09/23 10:32
俺はすぐさま木の影に隠れた。
気になってチラッと覗いてみると宇髄と名乗った男が鬼と戦っていた。
改めて見るとやはり容姿が優れているなぁとしみじみ思う。
まぁ、そんなことを考えている余裕があるほどゆるい状況じゃないんだけどね。
宇髄天元
ハッ、食わせねぇぞ。お前弱そうだし。首なんてすぐ切ってやるわ。
宇髄天元
あー、なんかこいつ面倒くさそう。いいか、すぐさま切ってやる。
なんか、すごい余裕あるね。
鬼相手なのに。
あの人そんなに強いの?
じぃちゃんが言ってた柱には見えないけど…
そんな事を考えていると、宇髄さんのすぐそばに鬼がきていた。
もう、爪が触れてしまうのではないだろうか、というほど近くに。
我妻善逸
あっ、危ないっ!
思わず声を出してしまった。
宇髄天元
我妻!下がってろ!
我妻善逸
あっ、は
はいと返事をしようとした瞬間、
爆発した。
宇髄天元
音の呼吸
壱の型
鼓膜が破れてしまうのではないだろうかというくらいの爆音が鳴り響く。
あたりが煙だらけになり、思わずむせてしまう。
今、何が起きた?の?
気付いたら鬼は倒れていた。
首と身体はそれぞれ別の場所に吹き飛ばされていた。
我妻善逸
な、なにこれぇ
宇髄天元
我妻!大丈夫か?
我妻善逸
へ?あ、うん。大丈夫ですけど。今のなんですか!?
宇髄天元
今の?今のは音の呼吸だ。爆薬ごと切っただけだけどな。
我妻善逸
音の呼吸?そんなのあったっけ?
宇髄天元
音の呼吸は雷の呼吸の派生だからな。知らなくても当然だ。俺様独自の派手派手な呼吸だぜ。
我妻善逸
雷の呼吸の派生…
宇髄天元
おっ、日が出てきたぜ!これで鬼は燃えるな!
宇髄さんの向いていた方向と同じ方向を見ると、とても綺麗な朝日が出ていた。
思わず、視界に映った宇髄さんの顔を見る。
我妻善逸
…っ
単刀直入に言うと、とても綺麗だった。
朝日に照らされた髪がより一層輝きを放ち、力強く見据えていた瞳も綺麗だ。
そして、とても心地よい音がした。
力強いような、
優しいような、
安心するような、
そんな音がした。

容姿に見惚れ、
音に聞き惚れてしまった。

そして、愛しいものを見るかのような温もりのある笑顔がトドメとなった。
宇髄天元
なぁ、我妻!
我妻善逸
なっなんですか…
なぜか無償に恥ずかしくなり、顔を下げていると声をかけられた。
思わず顔をあげてしまう。
宇髄天元
お前の髪は綺麗だな。こんなド派手な髪初めて見たぜ。
我妻善逸
へっ?
宇髄天元
朝日に照らされて輝いてるぜ。
我妻善逸
そんな事ないですよ…
宇髄天元
なぁ、鬼殺隊に入るんだろ。
我妻善逸
いっ、今のところは…
宇髄天元
俺、待ってるから。鬼殺隊で待ってるからさ。またそのド派手な金髪見せてくれないか。
頭をぽんぽんと優しく撫でられる。
何故だろう。何故かすごく嬉しい。
心地いい。
なんだろう、この感情は。
我妻善逸
わっ、分かりました。俺、俺頑張ります!頑張りますから俺が鬼殺隊に入るまでに死なないでくださいね!
何故か、自然に言葉がでてきた。
今まで弱気だった俺が急に話し出したのが以外だったのか、目を丸くして驚いていた。
すぐさま笑顔になり、こう言った。
宇髄天元
おう!約束だ!
指切りげんまんをした。
俺より何倍も大きな手だった。
傷だらけで、鍛錬を詰んだ事がよく分かる手だった。
その後はすぐじぃちゃんの元に帰った。
じぃちゃんに怒られる事を覚悟していたのだが、怒りよりも心配が勝っていたらしい。
「どこに行っていたんだ。この馬鹿者!」と、半分くらい罵られながら抱きしめられた。
もちろん兄貴には激怒されたが。

――――
我妻善逸
炭治郎
善逸?思い出したのなら教えて欲しいのだが…
我妻善逸
言えない。
炭治郎
えっ?
我妻善逸
ちょっとこの話は俺のプライドが許さない。
思い出してしまった。
それはもうハッキリと。
言えるわけないじゃん…
宇髄さんに褒められたから染めないとか…
炭治郎
ま、まぁ善逸が言いたくないなら無理に聞かないが…
我妻善逸
なんか、ごめんね…でもさ、人に話せるような理由じゃないんだわ
炭治郎
そうなのか、まぁ理由があるのならよかった。なんの理由もないのに黒染めしないのはくだらないからな。
しれっとえげつない事言うじゃん…
宇髄天元
おーい!竈門と善逸じゃん!
炭治郎
あっ、宇髄さん!
我妻善逸
げっ
宇髄天元
おい!元柱に向かってげっ、とはなんだ!?
炭治郎
そうですよね!宇髄さん!そういえば、宇髄さんは善逸が黒染めしない理由とかって知ってます?
我妻善逸
あっ、ちょっ、おまっ、それ!
宇髄天元
善逸が黒染めしない理由?俺は知らねぇなぁ
覚えてないんだ。
ズキッ

は?ズキッてなんだよ?
そこは安心するとこじゃねぇの?
炭治郎
そうですかぁ、やっぱり善逸しか知らないのかぁ
我妻善逸
そっ、そんな事より俺お腹空いたっ!宇髄さん!俺うなぎ食べたい!
宇髄天元
はぁ?うなぎはこの間食べただろ?
我妻善逸
だって!炭治郎は食べてないし?
炭治郎
うなぎ?いいんですか!
宇髄天元
2人揃ってそんなに子犬みたいな顔しなくても…仕方ねぇなぁ!?奢ってやるよぉ!
我妻善逸
やったー!
炭治郎
やったー!ありがとうございます!
――――
その後、うなぎを食べ家に帰宅した瞬間宇髄は思い出した。
宇髄天元
まっ、まじかぁ。あいつ、あの時のことまだ覚えてんのかよ…しかも黒染めしない理由が俺とかって…あいつ俺の事好きすぎじゃん…
と、しゃがみこみぶつぶつ呟きながら赤面していた事は、帰ってきた宇髄を迎えに行った雛鶴しか知らないのであった。
――――
更新が遅れてすみませんでしたぁ!!!!!!!!!!!
_○/|_====3
ダイナミックドケザをしながら謝る主より。

プリ小説オーディオドラマ