あなたside
家を出る頃には、街灯がオレンジ色にキラキラと光っていた。
みんなが口々に話すからよく聞き取れなかった。
まぁ、センラは何言ってんだか分かった気がする。
蹴り飛ばしたいところだが、他のみんなもいるから見逃すことにした。
そして…バラバラの言葉でも、たどり着く答えは同じように思える。
『また来てね。』
遠回しだけれど、そういう風に言ってるような気がする。
それが嬉しくて、つい笑みが溢れる。
『バイバイ』
それは誰もが使う言葉だけれど…
私はあまり使いたくはない。
だって……"バイバイ"はもう会えないかもしれないって思うから。
"また"なら次がある、また会える。そう思える。
また会いたいから……バイバイとは言わない。
しかし、そんな事は所詮、私の考えであって誰もが思うことではないだろう。
バイバイと聞くと、どこか不安になってしまう自分が、ひどく弱く感じられる。
直したいけれど…どうしても直せない癖のようだ。
私がバイバイとは聞きたくないなんて誰も知らない。
当たり前だ。誰にも言ってないのだから。
言ってしまえば、相手に余計な気を使わせてしまうだけだ。
でも…
分かっているはずがないのにこの人たちは………
そう言ってくれるんだ。
道に生えている植物には霜が降りるくらいなのに…
不思議と心はすごく温かくなった。
パタン………………
あたたかい人達と、私との間に壁ができる。
ハッと我にかえると、扉に向かって手を伸ばしていた。
今度こそ帰ろうと、身をひるがえしセンラ達の家を後にした。
家に帰る途中……
センラ達の家に長居したことを深く後悔した。
だって…………
あのあたたかい空気なんて1ミリも存在しない。
静けさだけが漂うあの家は自分がずっと住んでいた家だというのに…
居たくない………帰りたくない………。
そう思ってしまった。
家の前まで帰ってきたものの、その先へと踏み入れるのを拒否するかのように足が動かない。
この街は夕方から夜にかけて人通りが多くなる。
そんな時間帯に一件の家の前にポツンと突っ立っていられる訳もなく…
キィィ……ガチャ……
また………返ってくるわけもない返答を期待してしまうんだ。
─────────
なにかした訳でもないのに太ももが謎に筋肉痛…。ダラダラゴロゴロしてるだけでも筋肉痛になるんですかね…。
記憶がすっ飛んだのでしょうかね…。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。