第66話

親子。
167
2021/01/14 10:44






あなたside



何も言葉が出てこない……。


どうしよう…何か答えなきゃ……

  



親のことを聞かれたらいくら楽しいときでも嘘のように言葉が出ない…




それに……言葉が出ない原因は他にもあった…





考えを邪魔している…それは







『彼女───────』





その言葉が頭から離れない…。


センラの彼女になんて似合わない……。



そもそも……センラのことは好きではないし………。

あなた
あなた
(それなのに…どうして………。)


どうしてこんなにも苦しいのだろう……。






その理由なんて………分かってるはずなのに…。




この気持ちも……手遅れになる前に…


    

     『消してしまわないと…』



センラ
センラ
あなた……?大丈夫…?
あなた
あなた
えっ…………?


センラに名前を呼ばれてはっと我にかえる…



視線を少し上に向けると、心配の色を浮かべた色とりどりの瞳が覗く。



その中でも一層心配そうに見つめていたのはセンラだ。

あなた
あなた
あ、いや…ええと………
あなた
あなた
(なんて話すべきか……)


置いて行かれたなんてとてもではないが言えない…



ケンカした……なんて言うのにそんな時間はいらないだろう。


返って怪しまれるかもしれない…

センラ
センラ
あなた…。
あなたの好きなようにしてええんやで…?
あなた
あなた
へ……………?
センラ
センラ
親となんかあったんなら
うちにいつでも来てええよ。
坂田
坂田
そうやで!
志麻
志麻
さっきも言ったとおり
俺らは大丈夫やからな。
うらた
うらた
君がいるとセンラも調子が良くなるだろうし。
センラ
センラ
なっ!?うらたん…何言ってんのやぁぁぁ!


え…?


悪くなるの間違いでは?


なんて言おうとしたが、気を使ってもらっているから心の中にとどめておいた。

あなた
あなた
……………。


ふいにじわりと目頭が熱くなった……。 




あぁ…この人達はどこまでも温かい人だ…。



今までに感じたことのないような優しさに包まれ無性に泣きたくなった…。



泣くなんて柄でもない。


迷惑をかけないようスッと瞬きをして泣きたい衝動をしまいこんだ。


あなた
あなた
じゃあ…もう少し………お邪魔してていいですか……?



他人の家に勝手に上がり込んでおいてまだ居させてくれなんて厚かましいかもしれない。



でも…もう少し…ほんとに少しでいいから…


この温かさに触れていたい。



今のこの人たちの表情、声色…


それら全てから…




『ここにいていいんだよ。』




そんな事を言ってくれている気がした。




全て勝手な想像にすぎないかもしれない。



けれど……



この人たちは今の、今日の居場所をくれた。




それは紛れもない事実だと思った…。

センラ
センラ
もちろん。居てええんやで。
うらた
うらた
一緒に飯…食うか?
志麻
志麻
ゲームしようや〜!
坂田
坂田
おしゃべりしたい!!


たとえ、今日だけだとしても………



初めての優しさに戸惑うけれど……






今……私が言えるのはこれだけだ………。



心の底からの、本当の……

あなた
あなた
『ありがとう……ございます………!』





─────────
小説を書くときって基本的に真顔なんですよね。
ネタを書いていても、ちょっとしんみりしたようなものを書いていても……。
無の世界ですね。この集中力が他のことに生かせたらなんて…。

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