センラside
『何を驚いてるん?』なんて顔をしている坂田。
いやいや、お前のせいだよ。
そんな視線を坂田に向けるが、そんなのも一瞬。
目がギョッと見開いたのが分かった。
俺の手元にあるはずのスマホが坂田の手元に………。
いや、取るんじゃねぇよ。
いきなりの事で思わず口が悪くなってしまった。
坂田は拗ねてしまったのかうつむいた。
ちょっと一方的に言い過ぎたな…
なんて一瞬でも思った俺がバカだった。
坂田がいきなりダッシュでリビングを出ていく。
俺のスマホを持ったまま……………!!!
つられるように俺も走り出す。
うらたんが俺を、坂田を志麻くんがしっかりとホールドした。
動けない…なんだこのばか力は………
実は細マッチョなのか?このたぬきめ………。
って、あれ?俺のスマホが…
坂田の手元にはスマホもなにも無い………。
許さないぞこのあほ……!!!
全く…人を煽ることしか知らないのか。
てか、坂田と志麻くんはそう言うだろうけど…まさかのうらたんまで…。
あ、てかやっと動けるようになった………。
それにスマホもポイッと投げられたけれど、ちゃんと返ってきた。
腕………何気に痛かった…。
おぉ………流石は年上……!!
どこかのバカ、あほとは大違いだ。
ふと思い出したから思わず呟いてしまった…。
それが間違いだった。
はっとして口元をおさえたが、もう後の祭り。
ただ1人を抜いて…………
うらたんが発した声はそこまで大きいわけでもなかった。
しかし、何故か聞かなくてはいけないような気がした。
坂田も志麻くんも同じように思ったのか、一瞬にして静かになった。
鶴の一声というのはまさにこの事か。
何か言い返すことはできなかった。
そうだった。
俺が今の立場上、普通に恋愛をすることは……
許されない────────
─────────
うらたさんってあの四人の中で唯一の常識人っていう感じがしてしまうのは私だけ……?いや、冷静…?
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。