あなたside
いつもより少し遅れたかな……。
学校の校舎に取り付けられている大きめの時計を見れば、予定時間を10分ほど過ぎていた…。
ぼんやりとしながら靴から上履きへとするりと履き替える。
ほぼ毎日している動作で体が覚えているからスムーズに履き替えることができる。
足早に教室へと向かう。
コツ…コツ…コツ…コツ…コツ…コツ………
教室の前まで来て、ふと思った…。
首を傾げたが、そのまま突っ立ってる訳にもいかないから扉を開けて入る。
ガラガラッ………
小学校の頃から朝、教室に入るときはあいさつをしましょうと言われ続けていた為、自然と口から出る。
習慣って怖いねぇ……………。
教室を見回して少し驚いた…。
というか、不思議だった。
ロッカーを確認しても、カバンの1つさえ無い。
人のいる気配も全くと言っていいほど無い…。
普段ならいるはずの人達がいないだけでどうってことないのに………。
前の私なら……気にしなかったはずなのに……。
今は………不覚にも寂しいなんて思ってしまう…。
未練だらけの私にはこの状況がとても過酷なものだ……。
まぁ…こればっかりはどうしようもない事だろう…。
流れに身を任せるしかない…。
自分の席について、支度をする。
そんな時でも考えているのは『あの事』だ…。
何をしていても頭の片隅では両親のことを考えている。
そんな自分に嫌気がさす。
でも…止めようと思えば思うほど逆効果だ。
片隅で済んでいるだけまだマシな方かもね…
聞き慣れた声が飛んできて少しビックリした。
ドアの方をふり返れば、センラが眠そうな顔をしてこちらを見ていた。
なんか酔っぱらいに絡まれた気分なんだが………。
何気ない会話でも、なぜかすごく安心した…。
センラは笑いながら支度をし始めた。
それを横目に見ながらふと思った…。
え、なんか恥ずい……。
頬が熱を帯びたのを感じ、とっさにセンラから顔をそらした…。
『なにバカなことをしてんだ私。』なんて自分にツッコミを入れた。
そんな事をしてるのもバカらしく思えて自分の頬を軽く叩いた。
それをセンラは目撃したのか静かに肩を震わせていたのは見逃してやった。
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明日からまた色々と始まる……。休みも少ない…。お正月なんだからもう少し…なんて思っている今日この頃です。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。