「先輩、そろそろ…
俺たち別れましょっか。」
「え?…」
「俺は、先輩のこと好きですよ。
初めて会った日から、ずっと。
今も好きです。
やっと彼女になってもらって。
でも、先輩は慎司って人のことが好きなんでしょ。」
「そんなこと…
それに慎司は、彼女ができたって今言ったじゃん…」
「それでも、です。
あなたの中で慎司って人への気持ちがほんの少しでもあるなら、
そろそろ俺は引かなきゃ。」
「先輩、絶対幸せになってください。」
俺は、お金だけ払って、
店を出た。
彼女がちゃんとタクシーに乗ることを
仲のいい店員さんにお願いして。
やけに夜空に輝く月が綺麗で、
ふと妹がこんなことを言ってたのを思い出す。
「I LOVE YOU って、月が綺麗ですね って訳すんだって。」
__月が綺麗ですね…
か…。
俺は、I LOVE YOUの訳し方を間違えた。
伝えきれなかった。
ただ、それだけだ。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。