第11話

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2018/05/14 12:55
夕方。






「あー、えっと、そろそろ私たち帰らなきゃ。」

「じゃあ俺らも…」

「あ!樹はさ、菜乃花送っていってあげて!

私たち行くとこあるから」

「あ…うん」





良し。

上手くいった。










ちょっと、お手洗い。



と、最後の2人の時間。







「菜乃花、緊張してる?」

「ちょっとね。」

「大丈夫だよ」

「ダメだったら…慰めてね。」

「うん」







恋している菜乃花は、
今まで見て来た中で1番、可愛かった。


「頑張れ、菜乃花」

「ありがとう」




菜乃花の背中を押して、私は帰ることにした。






「いいのか、あれで。」

「あれって?」

「2人だよ」

「うん。」







私は、樹じゃなくて、

お兄ちゃんと並んで帰る。





























親友へ

あなたは私に、「樹のこと好きじゃない?」と聞いたよね。
うん、好きじゃないよ。

好きになる前に、心をそっと閉じたから。
もう思い出すようなことがないように、
奥底に。

だって、好きになったって、何にも幸せじゃないでしょ?
何が良くて、樹なんて好きにならなきゃいけないの?

ね?

いや…



一つだけ嘘をつきました。

あなたの背中を押したその瞬間、
私は恋に落ちていた。


樹のこと、好きじゃないよ。









___好きだった、けどね。

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