ー「もってあと1年です」
ずっとずっと僕を診てくれていた、大好きだった先生が、今日はとても怖い顔をしてた。
先生の言葉が、今日はとても冷たかった。
言葉の意味なんてすぐに分かるのに、頭の中が真っ白になってうまく理解できない。
僕を挟むように座っていたオトンとオカンの目から涙があふれて、オカンは泣き崩れてしまった。
まるで、絶望したかのような、そんな涙。
先生は僕を見て、
「一緒に頑張ろうな」
そう言った。
先生の目も、涙で潤んでいたこと、気付いてたよ。
そんな先生も、泣き崩れるオトンとオカンも、
全部が他人事のように感じた。
あと1年やって、余命宣告されたのはオレやのに、
何で周りが泣いてるんやろう。
なんで僕は泣けへんのやろう。
そういや、ドラマとかでも余命宣告された本人は笑ってたりするもんな。
なんてどこまでも冷静な自分がいて、
僕の目の前に広がる悲しみの風景は、
まるで、ドラマのワンシーンのようだと思った。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。