僕が1番仲がいいのは、僕が入所して2年後に入ってきたしげ。
2年先に僕が入所してるから僕は先輩になるはずなんやろうけど、年はしげの方が上で、悪く言えば馴れ馴れしかったしげは後輩とは思えなかった。
悪戯はしてくるし、めっちゃ絡んでくるし・・(笑)
最初のうちはあんまり話さへんかった。
でも、一緒に仕事をする機会が増えたり、レッスンで隣同士になることも増えてだんだん仲良くなって。
話しているうちに、しげはいたずらばっかりする悪ガキではないということに(笑)気付いたんや。
ある日、レッスンの途中でしんどくてやめてしまった僕を見て、
「神ちゃんって体力ないん?」
そう聞いてきた。
小さい頃から体力がなくてすぐ疲れてしまうこと、貧血とか喘息とかあるし、ひどい時は倒れてしまったこともあること、学校の運動会では簡単な競技しか参加しなかったことを、
僕は正直に話した。
本当は誰にも言いたくなかった。
他の人と同じように、
「怠けてるだけや」
そう言われるのが怖かったから。
「僕もな?病気やねん」
しげがそう言った時、僕は驚いて「へ!?」ってすごい声出した。
しかも、聞きなれない病名で、症状も聞いていれば大変なことばっかりで。
「やから、神ちゃんの気持ち、ちょっとは分かるわ」
そう言って、しげはふふっと笑った。
その笑顔に、すべてを受け止めてくれたような気がした。
ただその笑顔だけで、重かったなにかがふっとなくなった気がした。
「でもびっくりやなぁ、おんなじような人がおるなんて」
しげはそう言って嬉しそうに肩を組んだ。
でも、ふと思ったんだよ。
そんなに辛い病気やのに、どうして病気だって分からなかったんだろうって。
よくよく見てみればしげはみんなより細いし、お弁当だっていつも作ってきた弁当だし、お菓子もあんまり食べへんし、ダンス中に壁にもたれかかってることやってあった。
ほとんど半袖を着ないしげがたまに半袖を着てくると、腕には注射の痣だってあったのに。
どうして分からなかったのかな。
答えは分かってる。
それは、しげがそう感じさせないからだ。
いっつも笑ってて、底抜けに明るいから。
とても強くて僕のことを気遣ってくれるしげとは、今では本当に仲が良くて1番の友達。
同じ境遇だから。
そんな理由で友達なんじゃないんだ。
僕はしげが大好きだから。
強くて優しくて明るいしげと、僕はずっと一緒におりたいと思うから。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!