レッスンの休憩で望がチョコレートをくれた。
・・・のはうれしいんやけど。
望がずっとポケットに入れたまま踊っていたせいで溶けてしまっていて、手がチョコまみれ。
我ながら下手な食べ方だ。そう思いながら手を見つめる。
望が僕を見てきゃはきゃは笑うのを尻目にトイレに向かった。
あいつはいつの間にこんなにもオレと打ち解けたんやろうな・・
ていうか、溶けたチョコ俺にあげて自分は溶けてないん食べるってどういうこと!?
ーガチャ
トイレのドアを開けながら叫ぶ。
と同時に目があった人。
洗面台に苦しそうに手をついてたのは、重岡だった。
慌てて重岡の所に行って、思わずさわってしまった肩。
案の定、重岡の真っ白なTシャツにチョコがついてしまった。
そう言ってあたふたしてたら、急に重岡が抱き着いてきた。
胸元がじんわりとあたたかくなって、泣いていることに気付く。
そう聞こうとした瞬間に、重岡は肩を震わせて泣き出した。
どうすることもできなくて、ただ重岡の背中をさすった。
なんで泣いているのかも分からないのに、「大丈夫や」なんて何度も呟きながら。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!