レッスンが終わるとすぐ、望がピョンピョン跳ねて近づいてきた。
望はそう言って嬉しそうに笑った。
そう言って僕より背の高い望の頭を、背伸びしてわしゃっと撫でると、えへへと可愛らしく笑う。
なんて首を傾げながらほどけた靴紐を結ぶ望が、パッと顔を上げて僕を見た。
望はきらきら光る笑顔で、僕に言った。
う~んと悩みだした望に、
僕は答えられなかった。
一生懸命笑って望に言うと、望は「は~い」と手を振ってくれた。
レッスン室を出ると同時に、作られた笑顔は消えていって、
かわりに大粒の涙があふれた。
幸い廊下には誰もおらんかったけど、誰かがくると嫌やからトイレに駆け込んだ。
誰も見ていないと分かると、
何かが切れたように止まらなくなる涙。
なぁ、
なんでオレなんよ。
今まで、余命はのばされてきたのに、
なんで今やねん。
なんで、オレは死ななあかんねん。
僕はまだ、
叶えたい夢がいっぱいあるのに。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。