第8話

深緑に祈りを
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2020/04/11 02:02
夜の眠れない日が続いた。








休日も、家にいるのが落ち着かんで、
よく散歩に出た。















9月22日。日曜日。



その日は、近所の神社に行った。












神社の空気が好きだ。

静かで落ち着く。



それに、なんか特別なことが
起こってくれる気がする。





神様が、お願いする為の存在やなくて、
感謝を捧げる為の存在なのは、わかってる。





でもどうしようもなく、

祈ってしまう。








チャリンチャリンチャリン…………


カランカラン







パンッ パン。



天月 光
桜人が、
学校に復帰できますように……
お見舞いに行こうかとも思ったけど、
なんだか気が引けるけん、結局行ってない。








だから、せめて祈る。









深緑の中の静かな神社で、
ひたすらに彼の無事を祈る。




















???
ひか、り……?



突然の声にビクッと身体が竦み、振り返る。






天月 光
…………桜人っ!
天月 光
…………っ、 もう大丈夫なん?
紀友 桜人
え?
…………あぁ、うん。
ごめん、心配かけた?
天月 光
…………何か、あったん?
紀友 桜人
え?
天月 光
顔色があんま良くないけん、さ……







あぁ、と彼は頷き、
少し赤くなって俯き頭をかく。










歯切れが悪い。






いつも確かに彼は柔和な人だけど、
それとは違って、何か迷いみたいな…………


























彼がゆっくりと顔を上げ、微笑む。




























桜の最期のように、微笑む。















紀友 桜人
…………余命宣告、された。
天月 光
……………… え、
紀友 桜人
あと1年も、もたないって。

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