JM side
ちゅ
ちゅっ ちゅ
甘すぎる
テヒョンアとジョングガが甘すぎる。
なんだこの空気感
甘ったるすぎて半径3メートル以内に近寄れない。
胃もたれする。
胃薬、今すぐ胃薬が欲しい。
昨日までの、あのどんよりとした空気からは
想像できないほどの、2人のいちゃつきよう。
テヒョンアがジョングギの首にキスして、
それをグガは、満更でもなさそうな顔で制してる。
この異常な空気を感じ取ったのは、
他の4人のヒョン達も同じみたいで、
みんな、まるで未確認生物を発見したみたいな
目を向けていた。
テヒョンアとジョングガの、
あの、ラブラブ具合を疑問に思ってる。
あー、これは大変だ。
ヒョン達にも胃薬あげないと。
皆んなの胃の心配をしながら、
僕はソファーから、腰を上げた。
ぐいっ
テヒョンアの首根っこを掴んで連行する。
急に動き出した僕を、
ジョングガが不思議そうに見上げた。
なんかもだもだ言ってるテヒョンアの声は無視して
一応、グガには断りを入れた。
グガは存外、さらっとテヒョンアを手放した。
きっとグガは察したんだろう。
僕がテヒョンアに何か大事な話があることを。
そんな空気を読んだグガとは裏腹に、
離れたくないと手を伸ばすテヒョンア。
そんなこいつに呆れながら、
無理矢理、自分の部屋まで引っ張った。
僕がわざとドスを効かせた声を出したって言うのに、
目の前の親友はにやにやしたまんまだ。
口の横に皺がよって、目は幸せそうに細められてる。
ほっぺがこれでもかってくらい上がって、
緩み切った顔面。
僕に指摘されても、
満更でもなさそうな顔をするテヒョンア。
まぁこの際、その腹立つ顔はどうでもいい
僕がテヒョンアをここまで引っ張ってきた
目的を達成しないといけない。
にやついた顔を一旦視界から外して、
真っ直ぐテヒョンアの目を捕え、僕は口を開いた。
予想外の返事に、
思わず座っていた椅子から、転げ落ちそうになった。
テヒョンアが僕に言わないといけないこと。
昨日2人の相談に乗って、僕は心配してた。
深刻そうな様子だったし。
だけど、何があったのか、
朝起きてみると、あっまい雰囲気を醸し出す2人。
仲直りしただけにしては、甘すぎる2人の表情。
そこから推測して、僕はてっきり、
付き合ったんだって思ってたんだけど、
見立て違いだったか?
テヒョンアのとぼけた顔見たら、
そんな気もしてきた。
はぁ良かった、、
やっぱり僕の見立てはあってたみたいだ。
ようやく思い出したのか、
口を大きく開けて、ハッとした表情をしたテヒョンア。
そうだよ、それを待ってたんだよ
僕が待ってたのは、付き合ったっていう報告。
雰囲気で何となく分かったけど、
テヒョンアの口からちゃんと聞きたかった。
テヒョンアからはずっと相談を受けてきたし、
結果をお預けされた感じがして、むずむずしていた。
ようやくいい報告が聞けると、
期待を含んだ目でテヒョンアを見つめる。
だけどテヒョンアの口から出たのは
また、突拍子のないことだった。
はぁ、?
勝手に違う話を進めるテヒョンアに、
混乱と、もどかしさが募る。
徐々に溜まるイラつきを振り払って、
何とか間違いをを正した。
平然とした顔で答えたテヒョンアに、
なんか腹が立って、怒りのままに詰め寄る。
僕に相談したからには、最後まで報告するのが筋だろ?
謝ってきたテヒョンアを見ると、
すんごい申し訳なさそうな顔をしていた。
なんかその顔見たら、ちょっと言いすぎたかなって
気持ちになって、仕方なく許すことにした。
ようやく付き合えたんだ。
一生告白するつもりはないって言ってたこいつが、
思いを伝えれたんだ。
恋愛には不向きすぎる、2人を取り巻くこの環境。
僕らも一応芸能人。
出歩く時はいつも誰かに見られてる。
それは記者だったりもするし、
一般の方達だったりもする。
いつ撮られているか分からないし、
ありもしない記事を書かれたりもする。
恋をするには、色々と障壁が多い。
そんな中、2人の前には
誰よりも分厚い壁がそりたっていた。
人気アイドルグループの、
メンバー同士が付き合ってるって知られたら
世間は大騒ぎ。
祝福の声もあるだろうけど、
もちろん批判の声も浴びせられる。
まるで見せ物のように、
2人の絡みが取り上げられていく。
バレてはいけない。
壁を超えた先に、必ずしも幸せがあるとは限らない。
周りによって引き離されることもあるかもしれない。
だけど、今はそれじゃないよな
男女間の告白でも、嫌われるかもしれないって
不安になるのに、ましてや男同士。
その分厚い壁を超えて、
引かれるかもしれない、
今の関係が崩れてしまうかもしれないって
そう、恐れながらも、自分の気持ちを曝け出せた2人を
褒めてやりたい。
怒るよりも、心配するよりも先に、
僕があげないといけないのは、心の底からの祝福。
それが相談を受けたやつの、
メンバーとして、2人の関係を見守るヒョンとしての
筋ってやつだと僕は思った。
とびっきりの笑顔で、
テヒョンアへ投げかけた、「おめでとう」って言葉。
1番に伝えないといけない言葉はこれだったなって、
少し反省した。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。