エレベーターに乗り込み、5階のボタンを押す。
外の世界よりも全然静かだ。
偽の恋人!と、人差し指を立たせるテヒョン。
…偽の恋人。何か、嫌な響きだな。
チーンと、エレベーターが止まる。
少し考えておくよ。と、テヒョンに言いながら
エレベーターを降りた。
2人でパチンッとハイタッチをして、
自分の部署へ入る。
部署っていうか、俺は個室なんだけど。
…それを作った父親すらも今は憎い。
机に鞄を立てかけて、椅子にもたれる。
ユラユラと椅子を回しながら考えた。
自分の口から出た言葉が頭に響き渡る。
純粋な恋愛がしたい。でも出来ない。
結婚もしたい。でも見合いは嫌だ。
そんな考えがグルグルと頭の中で回る。
ワガママなのだろうか。
でも生涯を共にするパートナー。
それを見合いなんかで決めたくない。
そう決意して、1人で頷く。
だがしかし、問題はこれからだ。
まず、恋人(偽)になってくれるような人が居ない。
さぁどうするチョンジョングク。
目の前の問題を解決するよりも、
単純な作業の仕事をやった方が今はいい。
そう現実逃避して、俺は机に向かい合った。
3時間は経っただろう。
ずっとパソコンを見ていると目が疲れる。
ただでさえ、気分が急激に下がっているというのに
今日に限って文字の打ち間違えが多い。
首を締めつけているネクタイを少しだけ緩め、
椅子から立ち上がる。
コーヒーでも持ってこよう。少し休憩したい。
そう思ってドアを開けた。
その時、ドンッ!と鋭い音。
慌ててドアの外を見てみれば、
タイトスカートを履いた女性が頭を押さえている。
女性に気を配りながら、散らばった書類を集める。
本当に今日はついてない。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。