何も言わない俺を怪訝に思ったのか、
心配そうな声で俺の名前を呼ぶ。
俺は、そんなあなたの腕を掴み引いて、
無意識に抱き締めてしまった。
ハッと気がついて、直ぐに離れる。
抱き締められた本人は頭に「?」。
今何をした。俺は今何を思った。
大丈夫だから着とけ。と、あなたを止める。
今の気温は頭を冷ますのに丁度いい。
そんなこと自分が一番わかってる。
持ってはいけない感情を持ってしまったことも、
本能であなたを抱き締めてしまったことも。
全部俺が一番わかってる。
俺たちは名残惜しそうに星空を最後に見上げ、
丘の階段を降りていく。
手は繋がないまま。
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私はメリーゴーランドで一緒に撮った写真を、
珈琲を飲んでいるミランに見せる。
ミランは信じられないとでもいうように、
目を片手で覆った。
嘘じゃないよね。手を繋いだことは。
大体1日中手を繋いでたなぁ。
最後の星空の帰りは繋いでなかったけど。
テーマパークも凄い楽しかったし、
星空も涙が出そうになるくらい綺麗だったな。
私を楽しませるっていう約束を守ってくれた。
見らんが見ていたのは、
車の中で拗ねたジョングクさんの写真。
確か500円で売るとか言っちゃったな。
バッとスマホをミランから奪い返す。
…何で奪い返した?
だって彼氏じゃない。ジョングクさんは。
ミランに見られても何もないじゃない。
何この感情。私知らない。
親友のミランなら何を見せても良いのに、
何でジョングクさんはダメなんだろう。
1枚500円で売ろうとか言ってたのに、
何今更誰にも見せたくないとか思ってるの?
…ねぇ、何でジョングクさんは私を抱き締めたの?
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。
登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。