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第1話

星が降った日
2,210
2019/06/03 08:08
俺はずっと思っていた。
いつか好きな人ができて、純粋な恋愛をして、
愛している人と結婚をして、一緒に歳をとる。
そう、小さい頃からずっと。
そんな考えが砕け散るなんて、誰が考えただろう。
それはそれは、急な出来事だった。
ネクタイを締め、スマホを手に持った時のことだ。
持った途端に携帯が鳴った。
相手は母親。
グク
グク
もしもし
グクの母
グクの母
もしもしジョングク?
グク
グク
何だよ母さん。朝から
スピーカーにして、身支度を整えながら
母の要件を聞く。
グクの母
グクの母
新しいお見合い相手が見つかったのよ!
そう、大きくハキハキした声で言った。
俺は書類を鞄に入れていた手を止める。
そして、スピーカー機能をオフにして話す。
グク
グク
母さん。俺はお見合いなんかしない。
何度言ったら分かってくれるんだよ
グクの母
グクの母
でも貴方は次期に社長なのよ?
少しぐらい立派な女性捕まえたらどう?
またこれだ。
毎回毎回同じ言葉を繰り返す。
『次期社長』
その言葉がどれだけ俺を苦しめているか。
母さん、アンタは全然分かってない。
父さんが社長の会社に働いて、
どれだけ同期に気を遣うのか考えて欲しい。
グクの母
グクの母
アンタは顔も整ってるし性格も優しい。
周りからの評判もいいからお見合いだって
グク
グク
話がそれだけなら切るよ。
相手に遠慮しておくって言っておいて
そう言い残して通話を切る。
朝から大きな溜息だ。
このまま行ったら本当に政略結婚にも成り得る。
グク
グク
何とかできねぇかなぁ
頭をガシガシと掻きながら、
革靴を履いて玄関を出た。
社員
社員
おはようございます
グク
グク
おはよう
社員
社員
おはようございます、ジョングクさん
グク
グク
あぁ、おはよう
朝から様々な人達から挨拶される。

それ自体は問題ないんだが、朝の話がある。

気分が沈むのも無理はない…と思う。
テテ
テテ
おっはよー!ジョングク!
会社の廊下を歩いていると、

後ろからバシンッッ!と背中に打撃。

あぁ、またやられた。
グク
グク
あぁ、テヒョン。おはよう
テテ
テテ
何だよ元気ないなー、何かあった?
同期の親友みたいなテヒョンに朝の事を話す。

まだ朝の出勤なのに何度溜息を吐いただろうか。
テテ
テテ
ほぇ〜。またかー
グク
グク
お見合いなんて本当はしたくないのに
テテ
テテ
大変だね〜
他人事のようにしやがって。と、内心毒を吐くが、

実際他人事なので何とも言えない。

そう思いながらエレベーターのボタンを押した。

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