第4話

君は僕の涙も好き。僕は君が好き。
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2020/03/07 06:28

 今日は空気が澄んでいて、快晴の青い空が広がっている。でも、僕の心はあまり澄んでいない。今日、クラスでの喧嘩に巻き込まれたのだ。
 それもちょっとした行き違いで起きてしまった喧嘩に僕は全く関係ないのに。その人の中で1番怒られてしまった。
中野 光
中野 光
もう、あのクラスやだよ。



 悔しくて、辛くて、怖くて。自然と涙が溢れてくる。ポタポタと、弁当の中に涙が入って。
 早乙女先輩が来る前に止めなきゃと思うんだけど。なかなか止まらない。
中野 光
中野 光
止まん、ない。っ、やだ、と…まれ。



 何度も涙を拭っても溢れてきてしまう。弁当包みで拭いても一角が吸いきれないほどに濡れてしまっている。
早乙女 美咲
早乙女 美咲
ひーかるん!
中野 光
中野 光
っ、んん。



 早乙女先輩が来てしまった。こんな格好悪い姿は誰にも見せたくない。特に早乙女先輩には。理由は……何故かわかんないけど。
 ドアとは別の方向に顔を逸らし、早乙女先輩を見ない。そして見られないようにする。
早乙女 美咲
早乙女 美咲
どうしたの?




 右側に先輩の温もりを感じた。でも右側は見れない。涙が零れて仕方がない。瞼を閉じたいように頑張ってはいるけれど…。
早乙女 美咲
早乙女 美咲
なんかいつもと違う匂いがする。
なんだろう?香水でもつけてきた?
中野 光
中野 光
つけてないです!


 思わず先輩の方を向いてしまった。すると、笑っていた早乙女先輩の顔が急変した。喜怒哀楽で表すと哀だろう。悲しげな顔をした。
早乙女 美咲
早乙女 美咲
なんで、泣いてるの?
中野 光
中野 光
い、いや…ちょっと教室で色々あって。



 落胆しただろうな。それくらいで落ち込む奴なんだって。もう、今日は最悪だ。食欲ないし。そんなことを考えながらまた俯こうとしていると早乙女先輩の両手で顔をペチンと優しく叩かれた。
早乙女 美咲
早乙女 美咲
元気出せ!ひかるんはピカピカ笑顔が1番!ひかるんは笑ってた方がいい!
中野 光
中野 光
うっ、せん、ぱいぃ。
早乙女 美咲
早乙女 美咲
ほら、泣かないの。
ていうか、甘い匂いがするんだけど。
泣くと匂い変わるタイプかな。



 今日もまた耳元で匂いを嗅ぐ。涙って塩っぱいしょっぱいものだと思うんだけど。先輩は甘く感じるらしい。
早乙女 美咲
早乙女 美咲
泣いてるひかるん、綺麗だね。
中野 光
中野 光
っ、、褒めてます?貶してます?
早乙女 美咲
早乙女 美咲
んー、どっちでもないかな?
笑ってるひかるんが1番好きだし、匂いもそっちの方が好き。



 早乙女先輩はにっこりと笑った。先輩の方が笑顔が素敵ですよ、とは言えなかった。心の奥で早乙女先輩を意識してしまっているのかもしれない。





 
早乙女 美咲
早乙女 美咲
はい、食べよ。
食べれば元気出るよ。
泣いてる顔も匂いも好きだけど。
中野 光
中野 光
もう泣きません!
早乙女 美咲
早乙女 美咲
えぇ、なんで?






 「好きです」
 この四文字を言えたら。そう思ってしまうほど君に夢中なのかな。

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