第10話

君に逢えたら
82
2020/03/14 08:30
「おぉ、中野。昨日大丈夫だった?」
中野 光
中野 光
うん。ちょっと風邪引いただけだよ。


 嘘だ。風邪なんて引いてないに等しい。でも恋愛がどうとか言える仲ではない。
 ''この恋はバレてはいけない''のかもしれない。そう思い、ロッカーに鞄を置きに行った。










 *****





「ってか、本当に珍しいよな。お前が風邪ひくなんて」
中野 光
中野 光
僕だって人間だもん、引くよ。



「中野がいなかったから昼の会話があんまりだったんだよ」

「お前…俺がつまらないみたいに言うなよ」



 2人は笑いながらそう言った。
 僕、ちゃんと必要とされてるんだ。それだけで嬉しい。主人公にはなれなくとも、主人公の友達Cくらいにはなれているのかもしれない。



「でもお前損したぞ」
中野 光
中野 光
えっ?



「昨日、うちのクラスに早乙女先輩が来たんだよ。その後時間差で齋藤先輩も来てさ」


「あれは絵になるよな。てか、何のために来たんだ?」



 2人は大きな声で他の生徒を呼んだ。事情を聞いてた時に不安が募った。なんの為に?このクラスには特に部活動で引っ張りタイプの人もいないし、生徒会の人もいない。
 


「だってさ、お前だよ」
中野 光
中野 光
へ?


「おいー。聞いてなかったのかよ」
中野 光
中野 光
ごめん。ちょっと考え事しちゃってた。



「だから、お前を探しに来たんだって。なんでか分かんないけど」
中野 光
中野 光
そうなんだ。会えたら話しておくよ。
 会えるなんて思ってないけど。





「それなら、屋上行けば?昼飯と昼休みの屋上にいるらしいぞ。なんでか分かんないけど1人でいるんだってよ。先生には黙認されてるらしいし」
中野 光
中野 光



 早乙女先輩は屋上に?なんで。齋藤先輩と一緒なら分かる。でも1人なんておかしい。
 チャンスがまだあるのかもしれない。




「中野?」
中野 光
中野 光
ごめん!ちょっと用事!!

 
 今、走らないと後悔する。絶対に。
 机から立ち上がり、教室から走り去った。



中野 光
中野 光
はぁ、はぁ




 息を切らして廊下を走る。階段を見つける。階段をただひたすらに上がる。

 ずっと、夢見ていた青春。叶うことの無い初恋。でも、今の僕ならいける。変われたんだから。もう何も怖くない。

 早乙女先輩、ずっと言いたいことがありました。どうか、どうか屋上にいてください。
中野 光
中野 光
っ、はぁ



 屋上の扉を開けると、そこには
早乙女 美咲
早乙女 美咲
ひか、、るん。



 1人で弁当を食べる早乙女先輩の姿があった。

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