___ねこ助side__
__ガタンゴトン
遊園地からの帰り道。
隣にはすやすや眠る、おれのご主人様。
電車がちょっと揺れて、ご主人様の頭がおれの肩にコツンと落ちてきた。
胸が高鳴って、ひょこっと猫耳がでてくる。
ドキドキしたりしたときにでてくる俺の猫耳。
はっきり言って、こんなの邪魔でしかない()
「____まもなく、##駅」
電車のアナウンスがなる。
んー、って、起きてるか寝てるのかよく分からないご主人様をなんとか改札を抜けさせて駅をでる。
寝ぼけてるご主人様かわいいなぁ、なんて思いながらかがむ。
こんだけ眠そうだし、明日になったらこのこと忘れてるんだろうなぁ。明日このこと話したらきっと顔真っ赤にするんだろうなぁ。
しばらく歩いたら、ご主人様の家が見えた。
ご主人様から鍵をもらって家を開ける。
とりあえずご主人様をベッドに寝かせる。
この家に俺がペット兼彼氏として来てから、1度も見ていないご主人様の両親の姿。
神様からは死んでるなんて聞いてないから生きてはいるはずなんだけど……
やっぱり眠たいのか、目を閉じたままそう話すご主人様。
そう聞くと、ご主人様は少し笑った。
それから聞こえてきた寝息。
この家にいっつも1人で「いってらっしゃい」も「ただいま」も誰にも言ってもらえなかったご主人様。
お父さんもお母さんも自分のために仕事頑張ってくれてるからって、きっとわがままも言ってこなかったのかな。
俺がご主人様の隣にいれるのは、あと1ヶ月と少し。
2ヶ月もない。
そんな少しの時間だけでも、ご主人様の、あなたの1番近くにいたい。
_____ホントは、ずっと隣にいたい。
そんな気持ちが芽生えてきている自分に、ちょっと笑えてしまう。
俺、ロボットで、猫なのに。
人間じゃないのに、こんな気持ち許されるはずがない。
でも、少しだけなら。思うだけなら。
少しだけでも、好きって伝えられたら___
そんな気持ちをこめて、ご主人様のおでこにそっとキスをした。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!