第2話

天使と悪魔
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2019/11/16 06:21
《 JK Side. 》

俺は天使のチョンジョングク。
天界と魔界が通ずる門の、門番をしている。

"天使"と言っても、
気がついた時には羽が真黒だった。
そのせいでよく悪魔に間違われる。


「グガ〜天界に行きたい!!通して!」

「悪魔は契約書がないと天界へ通しちゃ行けない約束なんです。帰ってください。」

「僕、いっつも魔界でひとりぼっちで寂しいの!羽の色真白だしバレないよ!だから、ね?」


と上目遣いで強請ってくる。


「ダメです。」


いつも俺に関わってくるこの人は、
"パクジミン"という悪魔だ。
羽の色も真白で天使だと勘違いされるが、
この人は正真正銘の悪魔だ。

見た目は可愛い天使のようだが、
性格は悪魔。


「いいじゃん!ね?」

「だから、ダメです。
ナムジュン様の許可を得てください。」

「えーん、グガったらひどいやつ!」


口をへの字にして
ほっぺたを膨らませたかと思ったら、


「いいも〜ん!ほら。」


そう言っておもむろに取り出したのは、
俺の恥ずかしい写真だった。
この人はこの写真をどこで手に入れたのか…。


「っな!!!なんでそれを持ってるんですか!」

「んふふ、内緒」


天使のような人が悪い笑みを浮かべて
また強請ってきた。


「この恥ずかしい写真、
天界にばらまいてもいいの?」

「…………ダメです。」


本当にこの人は悪魔だ。



ジミンさんとの出会いは3ヶ月前。
俺が天界にやってきて1週間経った頃だった。

門で見張りをしていた時、
美しくて真白で綺麗な羽のついた天使が
俺の目の前に現れたのだ。

その天使は俺の前に立ち止まったと思ったら、


「ふふふ、ジョングクくんだよね?
僕はパクジミン!よろしくね」


そう言って手を差し出された。
なんで俺の名前を知っているのか、
なんで顔を知っているのか、
その時は疑いもしなかった。

差し出した手を受け取ると
その美しい天使はにっこりと微笑み、


「僕、こんな羽付いてるけど、
本当は悪魔なんだ〜!へへへ」


と照れくさそうに言ってきた。
こんなに綺麗な悪魔がいるのか、
と内心思っていた。


「ジョングクくんは、僕と同じ悪魔?
羽真黒だし。」

「………違います。真黒な羽ついてますけど、俺は天使です。」


いつも誤解されてめんどくさい事になるから、
常に常備している"天使証明書"をみせた。
人間界で言う、身分証明書のようなもの。

ジミンと名乗るその男は驚いた顔をして、


「わあ!!本当だ〜!全然天使に見えないね!
僕達、間違えられたのかな〜ははは」

「そんなわけないじゃないですか」


笑った時に糸目になる目、
ふっくらとした唇、優しい声、
どこかで見覚えがあった。

でも、人間界のことはよく思い出せず、
そのどこかが分からないまま、3ヶ月が経っていた。

思えば、俺はジミンさんの事を何も知らない。
毎日のようにやってくるけど、
そんな深い話はしなかった気がする。


「だ〜か〜ら〜!
こればらまいてもいいの?って!」

「だからダメです。
…………あの、ジミンさん。
僕達、人間界で出会ったりしてませんか?」

「………ん、んんん、わ、わかんないなぁ、」


ジミンさんはあからさまに目を泳がせ、
途絶え途絶えの口調でそう言った。

絶対に何か隠し事をしている。


「なんでもいいので、言ってください。」

「………………。」










《 JIMIN Side. 》

僕は真白な羽がついている"悪魔"だ。

ジョングクとは人間界で知り合いだった。
知り合いというか、ストーカーのようなもの。

グクとは同じマンションの隣人で、
入居してきた時に僕がグクに一目惚れをした。

程よい筋肉、
モデルのようなスタイル、
うざきの目に恐ろしいほど整った顔立ち。

全てが僕のタイプだった。

外出した隙に郵便物を確認してみたら、
『チョンジョングク』という名前だった。
それからというもの、
学校名、バイト先、ダンススクールに通っていることまで全部調べあげた。

そしてある日、
興味本位でダンススクールまで
つけてみることにした。
いわゆる、ストーカーというやつだ。
でもその時は自覚はなく、
どんなことをしているのか気になっただけ
と思っていた。

そして事故が起きた。

車がジョングクに気づかず
ぶつかりそうになっている所を助けようとして、
間に合わずに一緒に死んでしまった。

目が覚めると、なぜだか痛みはなく、
病院のような部屋に居た。

隣にはどこも怪我をしていない、
無傷のジョングクが寝ていた。
僕も確認してみたが、
手や足は平然と動くし、痛みもまるでなかった。
何でだろう?と不思議に思っていたが、
その謎はすぐさま解き明かされた。

顔もない、影のような人達が数人
僕の元へ近寄ってきて、


「ここはどこですか?」


と聞いてみると、


「非常に言い難いのですが、
あなた達は不慮の事故により死亡しました。
お隣の方も、一緒に…。
そして今あなた達は天国と地獄の狭間にいます。
天国か地獄かはこちらが決めさせていただきます。」

「………そうなんですか。わかりました。」


この時の俺は自然に受け入れられた。
なんだか死んだ心地などはせず、
本当に病院にいるかのような感覚だったからだ。

そして、隣のジョングクはぐっすりと寝ている。
寝ている姿もこんなに可愛いんだなあ。
なんて呑気なことを考えていた。

そして運ばされた先は"魔界"と書かれた
世界だった。

"魔界"と言っても商業施設が立ち並ぶ、
普通の街のような感じだった。
皆同じ服を着ていて、
名前と生年月日が書かれた名札をつけていた。

何もすることがなく、
お腹も空かず、悩みもないこの世界で
ようやく『チョンジョングク』に出逢えた。

ジョングクは真黒い羽根を生やし、
天界と魔界の門に立っていた。
他に数人並んでいたが、
整った顔立ちに、程よくついた筋肉。そして、うさぎのような目はジョングクしかいなかった。

僕は意を決して話して見ることにした。


「ふふふ、ジョングクくんだよね?
僕はパクジミン!よろしくね」


と声をかけてみたが、
目が丸になって固まっている様子だった。
何回か話したことあるんだけどなあ、
忘れちゃったかな。


「僕、こんなに真白な羽付いてるけど悪魔なんだ〜!へへへ ジョングクくんは、僕と同じ、悪魔?」


と聞いてみたら、


「違います。真黒な羽ついてますけど、俺は正真正銘の天使です。」


そう言ってご丁寧に"天使証明書"まで見せられた。
なんでジョングクくんは天使なのに黒い羽根で、
僕は悪魔なのに白い羽根なんだろう。


「わあ!!本当だ〜!全然天使に見えないね!
僕達、間違えられたのかな〜ははは」

「そんなわけないじゃないですか」


と、素っ気ない態度をとられてしまった。
この素っ気ない態度は人間界にいる時と変わっていなかった。

それから毎日のように門を訪れては、
ジョングクと他愛もない会話をした。
天国に行きたいんだと言っているが、
本当はジョングクと話したいだけだった。

そしてある日、
いつものように門に行ってグクと話していたら、


「あの、ジミンさん。
僕達、人間界で出会ったりしませんでした?」


急にこんなことを言われて、
焦らない人がいるはずがない。


「………ん、んんん、わ、わかんないなぁ、」


といかにもな態度をしてしまった。


「なんでもいいので、言ってください。」


と真剣な目で言われたが、
あなたに一目惚れしてストーカーしてたので
2人とも死にました。
なんて言えるはずがない。


「あの、」

「グガ、急用思い出したから帰るね」

「え、あ、」


ジョングクが何か言っていた気がするが、
振り返ることなく、家へ帰った。

何も考えたくなかった。
バレたくなかった。


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