前の話
一覧へ
私が当時小学4年生だったころ一つ年の離れた兄は小学6年生。母はちょっとした部品を扱う仕事をしていた。父は薬を包装する工場で働いていていつも朝7時に出勤し、夜の7時半から8時に帰着するという感じ
で兄と私も年頃ということであまり話すことはなく気まずい関係だった。一方母とは喧嘩もしたり一緒に買い物に行ったりととても良い家族関係を築いていた。年も明け、兄が中学に入ったあたりからだった。慣れない生活リズムや部活と勉強の両立に疲れきってしまった兄は不登校になってしまいました。そんな兄を見た父は「情けない!みんなができてることがなんでお前だけできないんだ!将来もかかってるんだぞ!いつまでも甘えてるんじゃない!」と兄にキツく叱りました。それを見た私はあんな言い方しなくても、、、と思うことも度々ありましたが、キツい言葉を言われてもヘラヘラ友達と遊びに行く兄の姿を見て、しだいにあんな風にはなりたくない。私は違うと思うようになりました。きっかけは他にもあったかも知れませんが私が思い当たるところこの頃から境に父はやけ酒で日々のストレスを解消するようになりました。私はこんな生活が続くのかと思うと嫌でたまりませんでした。そして家族の空気も前より黒ずんでいくのを感じました。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!