放課後の教室。
最後に出る帆夏と言葉を交わし、柊斗を待つ。
昨日考えた言葉、今にも頭から吹っ飛びそうだが、その時はその時だ。
最近は柊斗のバスケの方が忙しかったため、朝も会ってなかった分、久しぶりに感じる。
想い……伝えないと。
私は深呼吸をして、口を開いた。
昨日考えた言葉など、そこにはなかった。
私の口からは、今……私が柊斗に伝えたいこと。
そのものがポンポンと飛び出す。
ここまでスラスラと出てきていた言葉が、何かにせき止められるように出てこなくなる。
どうしよう……このままじゃ、柊斗に想い伝わらない。
柊斗が突然そう聞いてきた。
騙した……
頭のどこかが過敏に反応する。
そうだ、私は柊斗に家の場所を騙されていた。
あのとき、保健室にいた時。
今でもはっきりと覚えてる。
柊斗は私のこと……好き?
柊斗の質問の速さに圧倒され、ただただ驚くことしか出来なくなっていた。
何事もないようにそう言う柊斗はずるい。
「好き」 と一言伝えるのに、私はあれほど緊張していたのに。
付き合いたい!
そう思っているのに、どうして私は可愛くない素直じゃない返事しかできないのだろう。
本当に柊斗は変わり者だ。
こんな素直じゃない先輩を好きになるなんて。
付き合う条件?
お互い好きなのに、まだ何かあるの!?
条件って……何?
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。