「さっきから、勿体ぶってなんなの?」と言わんばかりの口調になる。
さすが短気な私。
もう段々とイライラが増してきた。
が、そのイライラは一瞬にして消え去った。
それは柊斗が私に好きと言うことを求めてきたからだ。
確かに、柊斗にだけ言わせておいて、自分は……というのも不公平である。
私は拳を握りしめて、目をギュッとつぶった。
条件は 「好き」 だったのに!
でも……恋人なんだから、大好きも言えないなんておかしいかもしれない。
私は歯を食いしばって、心を落ち着かせる。
どうせ言うなら、もう文句は言わせない。次はないんだから。
そう考え、私は自分の出せる最大限の可愛さを武器にしてそう言った。
柊斗も「大好き」と言ってくれるのかと期待していると、思いもよらぬ返答が。
私がずるい……?
少なくとも柊斗よりはずるくないし、柊斗には言われたくない言葉だ。
いつの間にか、こんな風に揉めていた。
たった今、付き合ったばかりだと言うのに。
私自身、付き合った人と一分も経たないうちに喧嘩するとは思ってもいなかった。
お互い堪えていた笑みをこぼす。
柊斗となら、こんなバカなことでも笑っていられるの。
バカなことしてても、楽しくいられる。
最高の恋人だ。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!