体育館、グラウンド、教室……
どこを見ても柊斗らしき人物はいない。
いつもはヒョンと現れるのに。
何故か、こういう時にいないものだ。
でも、今すぐ伝えなければいけないわけじゃない。
いずれは伝えるのなら、もっと会う約束をしたりしてきちんと伝えることもできる。
走って探し回り、頭をフル回転させていたからか、疲れがどっと押し寄せる。
それもこれも、柊斗のせいだ。
放課後、誰もいない教室で一人。
椅子に座り、まるでブランコに乗っているかのように足を動かす。
てっきり、誰にも見られていないと思っていると、後ろのドアから帆夏が顔を出した。
そのまま教室に入ってくると、私の隣の席に座る。
急に帆夏がそう言ったことに驚きが隠せない。
一体、何を謝ることがあっただろう。
帆夏は、そう謝ってきた。
まだ……気にしていたのか。
そのおかげで柊斗とたくさん話せたし、自分の気持ちに向き合う事ができた。
むしろ、感謝だ。
そして、私はポケットからスマホを取りだし、柊斗とのトーク画面を開く。
『明日の放課後、私の教室に来て欲しい』
この想いを一つの紙飛行機に委ねた。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。