第2話

~春~①転校生
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2018/06/07 13:40
(キーンコーンカーンコーン…キーンコーンカーンコーン…)

学校中にチャイムの音が響きわたる。
ガラスの窓の小さな隙間から出る一筋の光りに照らされるしんみりとした廊下に、チャイムが鳴り響く。今日のチャイムの音はいかにも元気なように聞こえる。
生徒はもう席についている。さすが、世界No.1の面積を誇る学校だ。

「はーいっ!!出席とりますっ!」

エマのひよこみたいな高い声がマイクを通して学校中に聞こえる。かすかにくせ毛の髪の毛の先が、軽くマイクにすり合わさった音が少しエロい。
この学校は、生徒会長が全学年の出席をとるみたいだ。

「みなさん、今日は転校生が来るんですよ‼」

女子生徒「おー!!イケメン来ないかな‼」
男子生徒「か、可愛い子こいっ!」

学校がざわついた。転校生が来るという事実に驚きを抱いている生徒。生徒たちは転校生に理想と希望があるらしい。

「静かにー!で、その転校生に自己紹介をしてもらおうと思ったんだけど、まだ来ていないみたいで…」

男女生徒「えー!!遅刻なんてありえないっ!」

全校がまたざわついた。この学校では遅刻するという事実がないのだろう。

そんなとき、後ろからローファーの音が…。
(コツコツコツ…。)

(ガチャ…)
放送室のドアが開いたような音がした。開いたわずかな隙間からは、黒チェックのすそが見えた。この学校の制服だ。

(転校生かな…??)

エマの心臓の鼓動がリズム良くなった。久しぶりの転校生だからだ。

エマはクルクル回るイスを転校生がいるドアに向けた。髪の毛の結び目を軽く引っ張った。

転校生A「お前が生徒会長か。」
転校生B「生徒会長さんこんにちは!」

転校生Aは高身長、茶髪、足長。3拍子見事にそろった。クール顔だが、それを丸く納めるような柔軟剤のフローラルの香り。そこら辺の日本人の女子がキャーキャーと悲鳴を上げる様だ。
転校生Bは身長は小さいが、子犬みたいな見た目で可愛らしい。髪の毛の色は赤毛。とても笑顔がいやしになる感じ。これがいわゆる塩顔と言うものなのか。こちらも人気になりそう。

エマは生徒会長なのに、転校生の事はあまり先生から話してもらえなかったから詳しい事は知らない。

「あ、あのっ…!!この学校では髪の毛染めるのが校則違反なんですけどっ…。あと遅刻もダメですっ。それに早く自己紹介をマイクの前でいってくださいっ…」

エマはこう見えて人見知り。声は生まれたてのひなみたいに震えている。きっとあまりに今までの生徒と違いすぎてびっくりしているからである。

(トットットットッ…。)

ローファーを上手くならしてエマに近づいてきた。身長が低いほうだ。そしてエマの前で一旦止まり、エマの顎を軽く引っ張った。

転校生B「…。ずいぶん生意気ですねー。お兄さんがその口をふさいであげようか…??キスでね。」

「は…!??」
(キスってどういう事ー!!)


エマは生まれて初めてのキスでとても舞い上がっているが、一つ忘れている事がある。放送のスイッチが入ったままという事だ。

生徒「えー!!!!」


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