(キーンコーンカーンコーン…。)
チャイムがなった。そのチャイムの音に反応して一番に飛び出したのは、生徒会長エマだ。多分、晴大のいる保健室に行くのだろう。
(ガラガラガラガラ…。)
「はぁはぁ…。あんた!!っなに授業サボってんのっ!!」
全速力で走ってきたもんだから息が荒い。
「あ、なんか教室入りたくなくって。」
「もう!!子供じゃないんだからっ!」
エマは一番手前にあるパイプイスを手にとって座った。
「あ、そう言えば、さっきの虎太朗君とカーテンのところみたっ…??」
エマは恐る恐る聞いた。これが生徒にバレると大変だからだ。
「見たけど。めっちゃムカついた。」
晴大は一回目線をずらして顔を変形させた。
「ムカついたって、どういう事?」
「あのさ、いい加減きずけよ。」
「え??何が??」
「だからっ!!!お前の事が…。す…。」
(ガラガラガラガラ…。)
この立ち込めた空気の中に誰かが入ってきた。虎太朗だ。
「晴大、告白しようとしてるのか。まだ、エマちゃんの事全然知らないのにな。」
「してるし!お前に言われたくねぇ!」
「俺もエマちゃんに告白するから。今。」
「は???」
突然の二人の言い合いに、エマはきょとんとした表情で、晴大と虎太朗を交互に見ている。
「ちゃんと言う。好きだ。晴大と違って、エマちゃんを守れるから。付き合って下さい。」
「俺も好きだっ!!結構前前から気になってたんだよ。虎太朗じゃなくて俺を選んで下さい。」
二人ともゆっくりお辞儀をして大きな手を差しのべた。
「あーもう!ばっかじゃないの!!!」
「え??」
「二人とも甘い!!私の事を知ったつもりでいるけど、全然知れてないでしょ!」
「は??」
「告白するんだったらもっと知ってからにして!」
エマのにらめつける視線。いかにもシュールなものだ。
「がっつりフラれた。」
「生徒会長はやっぱり生徒会長だね!」
「まー、いっか!なんかふっ切れたし!生徒会長!今度告白するときは覚悟しとけよ!」
「俺たち転校生からの命令だよ!」
「かしこまりました!!」
「よし!!これからも全校生徒一致団結して頑張るぞ!」
「おう!」
「よし!きた!」
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。