朝一番、ドアを開けて、にっこり笑った魁理を見る。
(・・・・なんなんだ、この状況は!)
差し出されたその手を見て、思った。
(あー!耐えられん!)
そう言うと、魁理の右手が伸びてきて私のあごを掴む。
あごを掴む魁理の手を離した私はそう言い捨てて、走り出した。走って、走って。そして魁理が見えなくなったところで、私は走るのをやめた。
私の胸は走ったせいか、鼓動が早まっていた。ドクドクと大きく跳ねて、その速さは収まることを知らなかった。
(でもあの時、魁理にあごを掴まれた時、不覚にもカッコいいと思ってしまったことなんて、絶対に言わない!)
そうして、私は学校へと急ぎ歩きだした。この時、私の顔がリンゴみたいに赤くなっていることなんて私は知らなかった。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。