さっきまで泣いてたからか、俺達の目は皆腫れてるのを、叔父さんは心配してくれた。
叔父さんのその一言は、あぁもう終わりなんだと言う言葉と等しかった。
いよいよ。
いよいよ、別れの時だ。
海人からの質問もろくに返す事が出来ない俺は、なんて儚いんだろう。
新幹線の行き先的に、海人と、廉と紫耀で行き先が違うから、海人は一足先にここを旅立つ。
俺は腕の中にいる海人を下ろそうとした。
その瞬間。
海人が急にぐずりだしてしまった。
海人の泣き声がそこらに鳴り響く。
きっと、海人も何かに気付いたんだろう。
あぁ.....
この手を、離したくないな....
ずっとずっと永遠に抱いていられたら、どんなに良かっただろう。
もしも。
もしも、お母さんが亡くなってなかったら。
もしも、お母さんがここにいたら。
そしたら、今も、これからも、ずっと笑顔でいられたのかな....
そんな考えを巡らせては、ダメだ、忘れなきゃ、とも考えて首を振る。
俺には、何もできないんだ____________
愚図っている海人を無理矢理にはがして、叔父さんの胸に渡していく。
きっと、この言葉は海人には伝わっていない。
でもきっと、次会う時までには、理解できているだろう。
その日を信じて、海人には前に進んで欲しい。
涙が溢れそうになったけど。
最後は笑顔で手を振る。
それはずっと前から決めてた事だから、守らなきゃ。
そう思って、目の奥に力をこめ、震える手を大きく振った。
俺は、最後にそう言いはなった。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!