第2話

1年7組
162
2018/03/19 05:31
鈴亜
鈴亜
……人間界から来た笈原鈴亜だ。
………水属性が得意だ。苦手な属性は特になし、唯一あるとするなら闇属性。………………よろしく
鈴亜の挨拶はそれだけだった。
人前ではクールに立ち振る舞う。それが鈴亜だ。
ココ
ココ
…………よろ、しく
隣の席になったのは、目つきの悪い翡翠色の髪をした子だった。
鈴亜
鈴亜
…。
……名前、は
ココ
ココ
ココ。…ココ・エルリエ
どうやら本名のようだ。
鈴亜も一応カタカナの名前はある。
母の優夢にだってあった。
アリス・ノワール-それがそうだ。
鈴亜
鈴亜
わたし、は2つ名前ある…
ココ
ココ
………?
鈴亜
鈴亜
さっき言った笈原鈴亜、と……アリス・レガーテ
ココ
ココ
……………アリスって呼ぶ
若干口角を上げココは言った。
-仲良くなれそうだ。
鈴亜
鈴亜
…と、ところで
ココ
ココ
鈴亜は教科書の文字を指す。
鈴亜
鈴亜
これは…何語?
-少し、困惑の表情を見せて。
ココ
ココ
ああ……魔法語が読めないのも…人間界に居たからか、ボク、が…教える
鈴亜
鈴亜
…ありがとう
編入生-それも、難関と言われる編入試験を満点で通過した超エリート。
休み時間になると鈴亜は皆の注目の的になった。
エレイス
エレイス
編入試験ってどんな問題が出たの?
ミラシエ
ミラシエ
満点で編入って聞きましたわ
レント
レント
…………
鈴亜
鈴亜
え、えと…
ココ
ココ
……………アリスが困惑している。
一斉に聞くのはよした方がいい
まだよく知らないクラスメイトに囲まれて困惑していたところをココが止めてくれた。
レント
レント
…アリス?
その呼び名に、レントだけがぴくりと反応した。
ミラシエ
ミラシエ
…アリスといえばアリス・ノワールですわ
エレイス
エレイス
……まさか
周りも勘づいたのか、と鈴亜は思った。
というかアリス・ノワールってこっちにも知られているんだ。
鈴亜
鈴亜
わたしはアリス・レガーテ。
ノワールじゃない
少し焦りながらも答える。
その瞬間周りはなんだ、と言う顔をしたが-レントだけは疑いの目を向けていた。
ミラシエ
ミラシエ
…レント?
レント
レント
………君は何か隠し事をしているだろ
鈴亜
鈴亜
…!
レント
レント
図星か。
………まぁいい、俺はそのことを周りに話す気なんてないからな
それだけ言うとレントは立ち去った。
ミラシエ
ミラシエ
何だったのかしら
ココ
ココ
…知らない
エレイス
エレイス
と、取り敢えず鈴亜…?アリス…?どっちで呼んだらいい?
鈴亜
鈴亜
どっちでもいい。
呼びたい方で呼んでくれて構わない
表情を崩すことなく、鈴亜はエレイスに言った。
エレイス
エレイス
じゃ私は鈴亜って呼ぶね
ミラシエ
ミラシエ
私はアリスと呼ばせてもらいますわ
エルレア
エルレア
……エレイス、エレイス
エレイス
エレイス
どうしたの?エルレア
エルレア
エルレア
フレアが呼んでるよ
エレイス
エレイス
あら本当?
ありがとうエルレア
鈴亜
鈴亜
……フレア?
エルレア
エルレア
ああ、エレイスの妹。
……あたしはエルレア。エルレア・エルレイン。輝龍族だよ。
龍は珍しいでしょー。
人間界じゃ何億年も前に滅んだらしいから、魔法界で思う存分見てね………ってもまぁあたし達輝龍族はもうほとんど居ないけれどね…
少し苦い笑みを浮かべてエルレアは言う。
エルレア
エルレア
輝龍族はね、弱いの。
だからね、昔虐殺されちゃって。
………あたしはこうして輝龍族として生きられることに感謝してる。
そして、すべての龍の頂点…龍帝となって輝龍族の真価を見せつけたいの
鈴亜
鈴亜
…………
過去を語られ、鈴亜は思わず黙り込んだ。
虐殺された。理由は、弱いから。
弱き龍など不要、強き龍にのみ栄光あれ-そんなの、有り得ないだろう。
ココ
ココ
龍族は今の龍帝がなんとかならない限りダメだね。
………ボク達妖魔族にも共通して言えることだけど
エルレア
エルレア
今の魔法界はどの種族もいつ滅んでもおかしくないよね
アレイト
アレイト
ほんまになー。
俺ら鬼族も大昔殺されまくったから少ないんやでー
ココ
ココ
アレイト…いたんだ
エルレア
エルレア
……闇の力はダメ
アレイト
アレイト
俺も光の力はあかんわ
エルレアとアレイトは同時に違う方向へ歩いてしまった。
ココ
ココ
…アレイトとエルレアは仲が悪い
鈴亜
鈴亜
……
ココ
ココ
光属性と闇属性は対になるから
鈴亜
鈴亜
…そっか。
じゃわたしは……火属性に弱いのかな
ココは首を横に振る。
ココ
ココ
アリスは木と風属性に弱い。
ボクは無属性特化だからどれかに特化してる訳でもないしどれかに弱いこともない
鈴亜
鈴亜
そ、そう…
ココ
ココ
……あ、語弊があった。
…正確にはボクは特殊魔法を得意とするんだ
鈴亜
鈴亜
特殊…?
ココ
ココ
そう。
深層意識を操ったりね
鈴亜
鈴亜
………
ココ
ココ
ああ大丈夫。
アリスにはそんなのしない
そもそも、とココは思う。
【編入試験満点突破する奴が魔法を見誤る訳が無い】と。
ミラシエ
ミラシエ
…ねぇアリス。
あなたは編入試験を満点でここへ編入したんですのよね?
鈴亜
鈴亜
…うん
ミラシエ
ミラシエ
一体どうやって…?
鈴亜
鈴亜
…わかんない。
なんか満点とってた
軽く笑って、そう返す。
ミラシエ
ミラシエ
…!?それに水属性を得意とするんですのよね…
鈴亜
鈴亜
うん、父さんがわたしの体内の精霊を見てくれたら水属性が合うらしいから、小さい頃から水属性魔法ばっかり使ってる
ミラシエ
ミラシエ
せ、精霊……?
ミラシエは体内に精霊など無いはずだ鈴亜を見る。
僅かに色が違う双眸。
青と、青緑のオッドアイ。
ミラシエ
ミラシエ
本来なら体内に精霊など宿りませんわ…アリス………あなたは-
鈴亜
鈴亜
ただの魔法使いだよ、わたしは
ミラシエ
ミラシエ
あっ
鈴亜はその場から逃げるように廊下へ向かった。

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