鈴亜の挨拶はそれだけだった。
人前ではクールに立ち振る舞う。それが鈴亜だ。
隣の席になったのは、目つきの悪い翡翠色の髪をした子だった。
どうやら本名のようだ。
鈴亜も一応カタカナの名前はある。
母の優夢にだってあった。
アリス・ノワール-それがそうだ。
若干口角を上げココは言った。
-仲良くなれそうだ。
鈴亜は教科書の文字を指す。
-少し、困惑の表情を見せて。
編入生-それも、難関と言われる編入試験を満点で通過した超エリート。
休み時間になると鈴亜は皆の注目の的になった。
まだよく知らないクラスメイトに囲まれて困惑していたところをココが止めてくれた。
その呼び名に、レントだけがぴくりと反応した。
周りも勘づいたのか、と鈴亜は思った。
というかアリス・ノワールってこっちにも知られているんだ。
少し焦りながらも答える。
その瞬間周りはなんだ、と言う顔をしたが-レントだけは疑いの目を向けていた。
それだけ言うとレントは立ち去った。
表情を崩すことなく、鈴亜はエレイスに言った。
少し苦い笑みを浮かべてエルレアは言う。
過去を語られ、鈴亜は思わず黙り込んだ。
虐殺された。理由は、弱いから。
弱き龍など不要、強き龍にのみ栄光あれ-そんなの、有り得ないだろう。
エルレアとアレイトは同時に違う方向へ歩いてしまった。
ココは首を横に振る。
そもそも、とココは思う。
【編入試験満点突破する奴が魔法を見誤る訳が無い】と。
軽く笑って、そう返す。
ミラシエは体内に精霊など無いはずだ鈴亜を見る。
僅かに色が違う双眸。
青と、青緑のオッドアイ。
鈴亜はその場から逃げるように廊下へ向かった。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。