普段は落ち着いたクールな一面を見せるのだけど、たじろぐ姿が可愛くみえた。
彼とは別クラス。
教室内で目立つことはしたくなかったので、彼を中庭まで連れて行った。中庭に行くまでの間、彼は決まりの悪そうな顔をしていた。
中庭について私は深呼吸して言った。
桧山はコホンと咳払いをした。
冷静を装ってみせるけど、もう遅いのではないのか。
恥ずかしそうに人差し指でボリボリと頬をかいていた。
私は桧山の表と裏の写真を見てから、尋ねたいことがあった。口に出すと声が震えそうだ。
私のことをファインダー越しにずっと見てくれていた。モデルをお願いされたのは最近だけど、市民ホールの写真のことは一切口にしなかった。
桧山の気持ちが知りたい。
男性から初めて告白された。
記録を出したことに我を忘れるくらい嬉しくて泣いた日。
あの時から私は人に感動を渡せていたのだろうか。
膝の怪我で走れなくなった私。
私は怖かった。走れなくなった自分はもう誰も振り向いてくれないのではないかと。
やはり、桧山はどこでも、いつでも撮りたいみたいだ。
嬉しいけど、人の目があるのでやっぱり困る。
それを察したのか桧山は頭をかきながら言った。
日曜日、私は桧山とデートをすることになった。
桧山は私とのデートを意識してくれるのだろうか。彼のことだから、写真のことばかり考えてそうだ。それはなさそう。
どんな服装で行けば良いのかな。あまりオシャレに気遣う私ではないのだけど、この際、服を新調しようかな。軽くお化粧もしよう。
良い場所とはどこなんだろう。
もう既に浮かれていた。私は桧山のことが好きになっている。
そんなことを考えてると、ベッドの中で眠気に誘われた。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。