第5話

怖かった
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2020/11/26 16:02
神崎秋子
神崎秋子
桧山君、市民ホールの写真のことで話しがあるの。
桧山達也
桧山達也
えっ、神崎さんはあの写真を見たの?
神崎秋子
神崎秋子
何よ、私が見たらいけなかった?
桧山達也
桧山達也
ごめん、無断で写真を応募したことで、腹を立てているんだよね?
神崎秋子
神崎秋子
わかっているなら、もう勝手に応募しないで欲しい。
普段は落ち着いたクールな一面を見せるのだけど、たじろぐ姿が可愛くみえた。
彼とは別クラス。
教室内で目立つことはしたくなかったので、彼を中庭まで連れて行った。中庭に行くまでの間、彼は決まりの悪そうな顔をしていた。
中庭について私は深呼吸して言った。
神崎秋子
神崎秋子
桧山君の写真のモデルとして撮って良いから、私のこと。
無断じゃなければ良いよ。
桧山達也
桧山達也
本当に!
神崎秋子
神崎秋子
それから、ありがとう。
あの写真、元気が出た。裏側の写真も。
桧山達也
桧山達也
なんで裏側の写真のことを知ってるの!?
神崎秋子
神崎秋子
今日の桧山君は面白いね。
桧山はコホンと咳払いをした。
冷静を装ってみせるけど、もう遅いのではないのか。
恥ずかしそうに人差し指でボリボリと頬をかいていた。
私は桧山の表と裏の写真を見てから、尋ねたいことがあった。口に出すと声が震えそうだ。
神崎秋子
神崎秋子
桧山君は私のことが好きなの?
私のことをファインダー越しにずっと見てくれていた。モデルをお願いされたのは最近だけど、市民ホールの写真のことは一切口にしなかった。
桧山の気持ちが知りたい。
桧山達也
桧山達也
僕は神崎さんのことが好きだよ。
大会で涙を流したときから、好きだよ。
それは今も変わらない。
男性から初めて告白された。
記録を出したことに我を忘れるくらい嬉しくて泣いた日。
あの時から私は人に感動を渡せていたのだろうか。
膝の怪我で走れなくなった私。
私は怖かった。走れなくなった自分はもう誰も振り向いてくれないのではないかと。
神崎秋子
神崎秋子
私は好きになりかけてる。
桧山君のこと。
桧山達也
桧山達也
あと一押し足りないのかな。
神崎秋子
神崎秋子
そうね。
ところで、写真のモデルはいつなれば良いの?
桧山達也
桧山達也
それは、いつでも。
撮りたいときに山ほど。
神崎秋子
神崎秋子
それは困るわ。
やはり、桧山はどこでも、いつでも撮りたいみたいだ。
嬉しいけど、人の目があるのでやっぱり困る。
それを察したのか桧山は頭をかきながら言った。
桧山達也
桧山達也
良い場所があるんだ。
日曜日の予定はある?
日曜日、私は桧山とデートをすることになった。
桧山は私とのデートを意識してくれるのだろうか。彼のことだから、写真のことばかり考えてそうだ。それはなさそう。
どんな服装で行けば良いのかな。あまりオシャレに気遣う私ではないのだけど、この際、服を新調しようかな。軽くお化粧もしよう。
良い場所とはどこなんだろう。
もう既に浮かれていた。私は桧山のことが好きになっている。
そんなことを考えてると、ベッドの中で眠気に誘われた。

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