日曜日のデートだと思いたい、写真撮影は自転車で来て欲しいと桧山から頼まれた。
私たちは自転車で、一時間ほど走った。結構な距離だったのか、桧山の走るスピードが次第に遅くなった。
かくいう私も一時間も走るとは思ってなかったので息切れを起こしていた。
往復するから帰りの心配をした。
私の住んでる町は宅地ばかりだけど、少し離れると眺めは開けていた。森や田畑が多く見られる。
太陽が眩しい。思わず目の辺りに手をかざした。
林のある舗装されてない道を抜けると、そこには見渡す限り一面のヒマワリ畑があった。
ヒマワリの間近まで寄ると、私は自転車を押してゆっくり歩いた。
よく観察すると夏のヒマワリよりも少し小ぶりに思えた。
秋にもヒマワリが咲くのは意外だった。
花が太陽に向くからだろうか。
なんだか響きが良かった。
それほどの数なら、沢山の花を咲かせることに納得した。私はじっと花にある種を見つめた。
お互いに微笑んだ。内心桧山はよそ見をしてるかもしれないと思った。彼は大人びいてるところがある。自分だけの世界を持ってる。私とは違う。どこか遠い存在のように感じた。
夏の苦い思い出から生まれてくるものがあるのだろうか。ヒマワリを見渡しても、私は大勢の中の一人のように思えた。
桧山はそれでも私のことを好いてくれてる。
私は未だにはっきりと返事ができなかった。
私も桧山のことは好きだ。
でも、付き合うことで桧山は私のことを幻滅しないだろうか。それが怖い。臆病になっていた。桧山を失いたくない。
怪我をした夏の日以外にもヒマワリはある。
秋にも私は日だまりの中にいられるかもしれないと思えてきた。
沢山あるヒマワリの中から私だけを見つけてくれたのは桧山だった。
檜山との関係を壊したくない。
好きなのに告白したいのに、胸が苦しくなる。
私は寂しいのかもしれない。
大切なものほど怖くて触れられない。
彼からモデルの依頼を頼まれたときの感情が懐かしくなった。憎しみさえあった。
今はもう、ただ彼のそばにいたい。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。