第6話

いつまでも咲いて
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2020/11/27 01:21
日曜日のデートだと思いたい、写真撮影は自転車で来て欲しいと桧山から頼まれた。
私たちは自転車で、一時間ほど走った。結構な距離だったのか、桧山の走るスピードが次第に遅くなった。
かくいう私も一時間も走るとは思ってなかったので息切れを起こしていた。
往復するから帰りの心配をした。
私の住んでる町は宅地ばかりだけど、少し離れると眺めは開けていた。森や田畑が多く見られる。
太陽が眩しい。思わず目の辺りに手をかざした。
桧山達也
桧山達也
着いたよ
林のある舗装されてない道を抜けると、そこには見渡す限り一面のヒマワリ畑があった。
ヒマワリの間近まで寄ると、私は自転車を押してゆっくり歩いた。
よく観察すると夏のヒマワリよりも少し小ぶりに思えた。
神崎秋子
神崎秋子
思わずかくれんぼができそうね。
桧山達也
桧山達也
これは秋ヒマワリと言うんだよ。
秋にもヒマワリが咲くのは意外だった。
桧山達也
桧山達也
ヒマワリの学名は知ってる?
神崎秋子
神崎秋子
知らないわ
桧山達也
桧山達也
太陽の花と呼ばれているんだ。
花が太陽に向くからだろうか。
なんだか響きが良かった。
桧山達也
桧山達也
それと、ヒマワリの種の数はどれくらいあるかわかる?
神崎秋子
神崎秋子
私がハムスターなら食事に困らないほど多いわ。
桧山達也
桧山達也
ものにもよるけど、多くて三千粒ほど。
それほどの数なら、沢山の花を咲かせることに納得した。私はじっと花にある種を見つめた。
桧山達也
桧山達也
僕たちは太陽の花なんだよ。
皆で太陽に向かっている。
神崎秋子
神崎秋子
でも、皆が太陽に向くのは面白くないわ。私はそっぽ向きたいもの。
桧山達也
桧山達也
僕もよそ見したい。
お互いに微笑んだ。内心桧山はよそ見をしてるかもしれないと思った。彼は大人びいてるところがある。自分だけの世界を持ってる。私とは違う。どこか遠い存在のように感じた。
桧山達也
桧山達也
種は僕たちの感情みたいで、その一粒一粒が新しい気持ちを生み出すんだ。
神崎秋子
神崎秋子
私の悲しい気持ちからまた芽が出るのかな。
夏の苦い思い出から生まれてくるものがあるのだろうか。ヒマワリを見渡しても、私は大勢の中の一人のように思えた。
桧山達也
桧山達也
きっと出るよ。
神崎さんの気持ちから、僕は新しく芽が出たんだ。それは保証する。
桧山はそれでも私のことを好いてくれてる。
私は未だにはっきりと返事ができなかった。
私も桧山のことは好きだ。
でも、付き合うことで桧山は私のことを幻滅しないだろうか。それが怖い。臆病になっていた。桧山を失いたくない。
神崎秋子
神崎秋子
私は今でも太陽の光を浴びてるのかな。
桧山達也
桧山達也
夏だけじゃなく、秋にもヒマワリがあるだろう。
これは神崎さんだけのヒマワリだよ。
陽の光に当たってね。
神崎秋子
神崎秋子
冬にも春にも、ヒマワリがあるかもしれないわね。
怪我をした夏の日以外にもヒマワリはある。
秋にも私は日だまりの中にいられるかもしれないと思えてきた。
桧山達也
桧山達也
それじゃ、写真を撮ろうか。
沢山あるヒマワリの中から私だけを見つけてくれたのは桧山だった。
檜山との関係を壊したくない。
好きなのに告白したいのに、胸が苦しくなる。
私は寂しいのかもしれない。
大切なものほど怖くて触れられない。
彼からモデルの依頼を頼まれたときの感情が懐かしくなった。憎しみさえあった。
今はもう、ただ彼のそばにいたい。

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