第7話

桧山の世界
30
2020/11/29 02:46
私と桧山は休みの日に出かけるようになった。
コスモスや銀杏やキンモクセイやお寺の紅葉など、沢山の場所に私を連れてくれた。
写真のことも、教えてくれた。
ある時、檜山との写真撮影の時に子猫が道路の溝から顔を覗かせていた。
可愛くてつい私は近寄ろうとした。桧山にはそれを制止して『待って』と私に伝えた。

桧山達也
桧山達也
写真はね、角度を変えて撮るのも面白いよ。
ほら、今みたいに猫を撮る時は高さが違うだろ。そういう時には低い位置で写真を撮る。
目線を変えれば気づくこともあるんだよ。
私はゆっくりとしゃがみ、子猫に向かって手を差し出した。それでも、子猫は逃げていった。
私は桧山とクスリと笑った。
お寺の紅葉を見たときのことだ。
紅葉のそばに小さな池があった。
その水面に紅葉が写っていた。
桧山達也
桧山達也
それは写り込みと言うんだよ。
風がない日だと見ることができるね。
私も池に写るのだろうかと近くに寄った。
桧山達也
桧山達也
人の写り込みは心も映し出すかもしれないね。
私は桧山の見る世界が少し垣間見えたような気がして嬉しくなった。
自然と手を繋いで歩いた。心臓が止まる思いだった。桧山は私の手を強く握ってくれた。
未だに告白ができない。このままで良い。
でも、桧山のことをもっと好きになりたい。
私のことをもっと好きになって欲しい。
そんな思いが止めどなく溢れた。
私から桧山にキスをした。ファーストキス。
桧山は私のことを強く抱きしめてくれた。
このまま時間が止まれば良いのに。
永遠なんて言葉はないと思ってた。
でも、私はそれを信じたい。
もう告白しようと決心した。
そう思った矢先に事件が起きた。

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