京子が何故、桧山の肩を持つのかわからなかった。
気づけば市民ホールの前まで着いた。
先生に言われたように気晴らしだと思えば良い。写真を見るだけだ。自分に言い聞かせた。
中に入ると、受付の人がパイプ椅子に座っていた。折り畳み式のテーブルにはパンフレットらしきものが置いてあった。
お金がいるのかと慌てた私に目が止まったのだろうか、受付の人から『大丈夫です、是非ご覧になってください』とパンフレットを手渡された。受付の人は妙に晴れやかな顔をしていた。
桧山の写真がパンフレットにも紹介されてると思うと私は少し緊張していた。手が汗ばんでいる。
館内には書道や絵画から壺や手編みのような立体作品があった。どれも、つい声を出してしまいそうになるほど素敵な作品だった。
ゆっくりと眺めていると写真のコーナーに目が止まった。ここに桧山の写真が飾られている。
まだパンフレットを見てなかった。
でも、桧山の写真はどれかすぐわかった。
両手で広げたくらいの額に飾られた写真で、三枚構成になっていた。
一枚目は京子が花壇に花の水やりをしてる写真だった。
二枚目は私が泣いている写真だった。これは陸上の大会で記録を出した時のものだ。
三枚目が一番大きく写ってる。
私と京子が笑顔で並んでいた。
題名には『二人』の文字と大賞と記されていた。
既に私は桧山のモデルになっていた。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。