第3話

美術展には
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2020/11/27 01:14
神崎秋子
神崎秋子
神山先生、桧山君から写真のモデルにならないかと頼まれます。
何度も断ってるのに諦めてくれません。
私は職員室に行き、写真部顧問である神山こうやま先生に相談をしてみた。
神山先生
神山先生
あら、困ったわね。
神崎秋子
神崎秋子
私も困ってます。
神山先生
神山先生
桧山君は何故、神崎さんに写真のモデルをお願いしてるか知ってる?
神崎秋子
神崎秋子
わかりません
神山先生
神山先生
そう……
わかったわ。
私から桧山君に注意しておきます。
神崎秋子
神崎秋子
お願いします。
私が職員室を立ち去ろうとしたとき、神山先生に呼び止められた。
神山先生
神山先生
神崎さん、今ね、近くの市民ホールで美術展が開かれてるの。
それに桧山君の写真が展示されてるの。
桧山の口から一言も聞いたことがなかった。
彼がどんな写真を撮ってるのか少し気になった。
神山先生
神山先生
もし良かったら、気晴らしに見て欲しいな。
放課後、京子も一緒に帰ろうと誘ってみた。
でも、園芸部でやることがあるからと断られた。
その時に一言。

三上京子
三上京子
桧山君をあまり悪く思わないでね
京子が何故、桧山の肩を持つのかわからなかった。
気づけば市民ホールの前まで着いた。
先生に言われたように気晴らしだと思えば良い。写真を見るだけだ。自分に言い聞かせた。
中に入ると、受付の人がパイプ椅子に座っていた。折り畳み式のテーブルにはパンフレットらしきものが置いてあった。
お金がいるのかと慌てた私に目が止まったのだろうか、受付の人から『大丈夫です、是非ご覧になってください』とパンフレットを手渡された。受付の人は妙に晴れやかな顔をしていた。
桧山の写真がパンフレットにも紹介されてると思うと私は少し緊張していた。手が汗ばんでいる。
館内には書道や絵画から壺や手編みのような立体作品があった。どれも、つい声を出してしまいそうになるほど素敵な作品だった。
ゆっくりと眺めていると写真のコーナーに目が止まった。ここに桧山の写真が飾られている。
まだパンフレットを見てなかった。
でも、桧山の写真はどれかすぐわかった。

両手で広げたくらいの額に飾られた写真で、三枚構成になっていた。
一枚目は京子が花壇に花の水やりをしてる写真だった。
二枚目は私が泣いている写真だった。これは陸上の大会で記録を出した時のものだ。
三枚目が一番大きく写ってる。
私と京子が笑顔で並んでいた。
題名には『二人』の文字と大賞と記されていた。

既に私は桧山のモデルになっていた。

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