第3話

☀️Hello☀️
78
2020/10/26 07:22
私と優樹が出会ったのは、中学2年生の頃。
優樹はとにかく優しい。
クラス替えがあり、新学期初日、いつも通り意味もなく窓の外を眺めていたときだった。
「おはようございます。」
突然、声をかけられた。
私は学校でいつも一人だった。
昼休みなんかも、女子達がきゃあきゃあ騒いでる横でドリルの問題を説いていたし、
ちょっとしたスキマ時間があれば、本を読んでいた。
うちは公立中学だったから、多少小学校の知り合いもいた。
けれど、その人達もいつの間にか新しい友達を作り、気づけば一人だった。
家でも、両親は夜遅くまで帰ってこないし、授業でもあまり発言しないため、酷い日は一度も喋らなかった。
そんな私に声をかける人なんて、プリントの答えを見せて、とか提出物忘れた報告とか、そんな事務的な話の内容だけだ。
そんな私に声をかけるなんて、


どんな内容、そしてどんな人だろう。
私は恐る恐る振り返る。
──ひとめぼれというやつだ。
そこにはキリッとした目つきの、すらっと背の高いモデルのような男子が立っていた。
私はひと目見て虜になった。
「お、おはようございます」
緊張で舌が回らず、変な声になってしまう。
でも彼はそんなこと気づかない様子で、にこっと微笑んでくれた。
どうやら彼は私の隣の席のようで、机に貼ってある名前の書かれたマグネットをチラッとのぞくと、
「伊達 優樹」と黒くて細い字で書かれていた。
どうやら彼の名前らしい。
「あ、伊達だよ。えっ…と香山さん?よろしく。」
覗き込んでいたのがバレたのか、彼は軽く名前だけの自己紹介をした。
社会的に考えたら、私も名前と、それから「よろしく」を返さなきゃいけない。
今日はやけに喋るなとか思いながら、私も口を開いた。
「あ…よろしくお願いします…香山です。香山美里…。」
「香山美里…」
彼は視点を天井に向けて、まるで考え事をするかのようになった。
少し失礼だと思った。
しかし今思えばこのやりとりが、今後の私達の関係と、私の未来を大きく変えるきっかけだった。










「───美里…それすっごくいい名前!!!」








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