電車にゆられるこの時間は私のお気に入り
静かな車内で考えるのは
さっきの奏太との会話。
──『本気ならいいの?』
その言葉が私の心に重く沈んで 耳にこびりついて離れない。
それに、瞼の裏に焼きついているような奏太の顔。 瞼を閉じても浮かんでくるあの顔。
いつもの笑顔は消え失せて、目が私をとらえて離さない。
そのギラつく目は獣のような妖艶な雰囲気を醸し出していて…
私は
──ゾッとした。
飲み込まれそうなその雰囲気に。それに思わず首を縦に振るとこだった。
あの顔をみれば本気なんだってわかる。
分からない程馬鹿でも鈍感でもないから…気づいてしまう
だからすぐに誤魔化した
それが気持ちを踏みにじっているのかもしれないし狡いことをしているのかもしれない
それを考えれば少し罪悪感が胸に募る。
多分上手く誤魔化せたはずだし大丈夫なはず。
私が気付かないふりをすれば
まだ、この友達は続けられる
この縁は断ち切られない
そう自分に言い聞かせる。自分が何に対し危惧しているのかも分かってる。
でもその濃ゆい霧が胸から晴れることはない。
──「ふぅー」
それを吐き出すように静かに息を吐くと落ち着いてくる思考
そして、奏太への罪悪感も少しは薄れた。
(にしても、明日学校行くのだるいな…翔琉のせいで!!)
明日のことを想像すれば憂鬱な気分になるけど
まぁ、いいか。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!
転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。