私の愛おしい人の名前を呼んだ
何も聞きたくなくて耳を塞ぎ、
俯いている私のすぐ近くで
チェナさんのことを呼ぶジミナの声が聞こえる。
私の名前を呼んでよ。
チェナさんの名前じゃなくて、
ちゃんとあなたって、
私を呼んでよ、、、、、
もう感情がごちゃごちゃで
何が何だかんだ分からない。
気がつけば
ジミナはチェナさんの隣に移動していて、
手を握っていた。
恋人繋ぎで。
ジミナのムチムチな手が
チェナさんの綺麗で小さく、細い手をしっかり包み込むようにして、、、、
ボタッと私の目から涙が一粒こぼれ落ちた。
おかしいね。
復縁したって聞いても泣かなかったのに、、、
いざ、ジミナを目の前にすると、
あなたが私とは違う人の名前を呼んで、
あなたが私とは違う人と手を繋いで、
あなたが私とは違う人のことを目に映して、
あなたが私とは違う人を大切にしていると思うと、
「愛は世界を救う」
なんて言葉はただの綺麗事にしかすぎなくて
酷く無責任に聞こえる。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!