第63話

062 会いに来たのは
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2018/08/14 21:27
涼介
...俺が言い出したのに矛盾してるよな


本当に申し訳なさそうに言うから、
あなた
ホントだよ、矛盾してるよ


そう返してあげた。
涼介
ごめん。でもあの時はそうするしかなかった
あなた
山田くんの選択は正しいよ、だから、私ももう山田くんに会わないって決めたの。連絡先も消した。それなのに...なんで会いになんか来たの?


どれだけ、思い出をしまうのに苦労したか。
やっと、忘れられると思ったのに。




あと少しで、山田くんと出会う前に戻れると
思ったのに...なんで今、このタイミングで...?
涼介
さよならって送られてきてから連絡が途絶えた。最初は俺もその方がいいと思ってたし、ありがたかった。でも...嫌なことがあった時、嬉しいことがあった時、話したいって思って最初に浮かぶのはいつもお前でさ、まじムカつく


山田くんと目が合って、ドキッとする。
あなた
あの...


なんか言わなきゃ、そう思うのに。
どうも口が動かない。
涼介
...あのさ、お前と海が見たい


山田くんが、あまりに切なく呟くから。



これで最後だと思って、承諾した。







洋楽が流れる車内。窓から見える景色が
ものすごいスピードで移り変わってゆく。




真っ直ぐ前を見て、ハンドルを握る山田くん。




その横顔を見ながら...こんなに悲しくて辛い気持ちになるなら、出会いたくなかったとさえ思ってしまう。




車が停車して、降りた時には11時過ぎで。
あなた
こんな夜の海に来るのは、
生まれて初めて
涼介
俺も


今日、山田くんと会ってから初めて笑った気がした。
あなた
あのね、山田くん


どこまでも続く海を見てたら、山田くんに
伝えたいと思った。




親友に何度も伝えなくていいの?って言われても
頑なに伝えないと言ってたのに...。
涼介
どうした?
あなた
私、イギリスに行く...


暗くても山田くんの驚いた顔ははっきりと見えた。

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