初めの頃は、そう決めたものの、
思い出してしまって、辛かった。
だけど、季節を1つ、また1つと超える度に、
思い出すことが減って。
辛くなることが減って。
今では、あの時のことなんかまるでなかった
かのように前と変わらない生活を送ってる。
授業中、ずっと隣でソワソワしてた
親友が授業が終わると、話したくて
たまらない様子で声を掛けてきて、
ヤバくない?!って超ハイテンションな親友。
宥めながら、忘れかけてた山田くんのことを
思い出していた。
すごいな、出演決定か。じゃあ、
もっと忙しくなるってことだよね??
一緒にドライブしてた人が...
そう思うと、どこか不思議な気分になって
しょうがなかった。
そう言って、親友は山田くんと多分メンバーだろう。が映ってる動画を見せてくれて。
だけど、私は目を逸らした。
...山田くんのこと見たくなかった。
見れば、心の奥底にしまった思い出が
楽しかった時間のことが溢れてきそうで。
悲しそうな顔をさせて申し訳ないけど
どうしても見れなかった。
ほら、って見せられたのは、
親友と山田くんのトークで。
Ryosuke»あいつ、俺のことブロックしてんだよ
Ryosuke»あいつ元気にしてる?
その他にも度々、登場するあいつ。
山田くんが私を呼ぶ時は、いつも、なぁ、おい、
とか苗字呼びで。
その雑さを思い出して、クスッと笑ってしまった。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!