第6話

鐘の音
15
2019/11/03 02:23
卒業式終了後、会場を出てすぐ、マルビアは私の元へと走ってきた。
焦ったような姿に、笑ってしまう。
あなた

どうしたの、そんなに急いで

マルビア
マルビア
――すぐに、君に会いたくて
あなた

ふふ、変なの

私が笑うと、マルビアも笑い返す。
優しい微笑みに、少し不安が和らいだ。
あなた

答辞、素敵だったね

マルビア
マルビア
ありがとう
マルビア
マルビア
柄にもなく緊張してしまったよ
あなた

そうなの?

あのマルビアが緊張なんて。
声が上ずっている様子も、足が震えている様子もなかった。
私なんてきっと、あの場に立ったら声すら出せないに決まっている。
ボーーーン…………
夕刻を知らせる鐘が鳴る。
私は思わず時計台を見た。
この鐘の音はあの時も、ーー死ぬ直前にも、聞いた気がして。
あなた

ーー…っ

辺りを見回す。
なにも、起こらない。
マルビア
マルビア
あなた?
じわじわと、死ななかったのだという実感が沸いてくる。
手が震えたのを固く握って、マルビアへと向き直った。
あなた

ううん、なんでもない

あなた

それよりも、話があったんだよね?

一瞬マルビアの身体が強張って、目線を逸らされる。
マルビアの動きを待っていると、暫くして、マルビアは再び私の方を向いた。
マルビア
マルビア
ーー突拍子もない話だけれど、聞いてくれる?
頷くと、マルビアは再び口を開く。
マルビア
マルビア
これは、僕の勝手な懺悔なんだけれど…
そうして、私はマルビアの話に耳を傾けたーー……。

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